独立行政法人国立病院機構指宿医療センター

月アーカイブ: 12月 2011

指宿 菜の花通信(No.27)「田舎医者の流儀(2)・・・今年はどんな年だったのか・・・」

一年が過ぎるのが早い、もう今年も終わりそうだ。齢68歳にもなると、特にそう感じてしまう。年をとると代謝が鈍くなり、実時間をより長く感じ、そのため逆に一日が短くなるのだそうだ。そうは言っても、我が人生の一年である事に変わりはない。

3月11日の東北関東大震災は2万人近い人が犠牲になった。「想定外」の大地震・津波であったと云われている。我々は「想定外」と言っているが、知らないからそう言っているだけかもしれない。36億年の地球の歴史の中では「想定内」なのかも知れない。867年に起こった貞観三陸地震は今度の大震災と同程度の大地震・津波であったという。しかし、その記録があるわけではない。地質学的調査で証拠が集まってきている。地震の記載のあるのは日本書記(5世紀)が最初という。日本列島の長い歴史(約13000年)の中で文字記録が残っているのはわずか1500~1600年位の事で、それ以前の長い歴史ことを我々は十分には知らない。

20世紀初めロシアに隕石が落ちた。その時の様子が「1908年6月30日、シベリアの僻地、上空8キロメートルの地点で爆風が発生し、一帯が壊滅的な被害を受けた。近くの森で火事が発生し、2600平方メートルを越える範囲で8000万本の木がなぎ倒された」「落下した物体の直径は30メートルであり、地球にぶつかるのは100年に1回程度だ。・・・50メートルの隕石は1000年に一度」(すべてはどのように終わるのか・・・How It Ends from You to the Universe :クリス・インピー 小野木明恵訳)と記載されている。

この星・地球には制御できない危険―地震、津波、火山、気候変動、大型隕石落下などーに満ちている。その中で我々は核物質の最終処理を出来ないまま、原発を利用している。これが制御できない危険に出会ったのが、今回の福島原発の事故となる。この大災害は我々に今一度立ち止まって、今後の「有様」を考えるよう求めているように思う。

この大災害の中でも我々の日常は流れていく。NHO指宿病院での総合内科医としての生活も3年目、今迄、循環器専門医として仕事をしてきたので、内科全般の患者さんを診ることは勉強させられる。しかし、そのことは結構楽しい。指宿病院の再建も、ここ数年の努力で、おおよそ目鼻が立ちそうだ。ここで働く者としては大変嬉しく思う。もうひとつの仕事、鹿児島県の研修医を増やす活動では、来年80名を超える見通しとなった。この数は6年ぶりである。評論や弁解をしているのみでは事態は改善しない、具体的に改善の姿、数を出していく事が重要と思っている。

平成23年12月27日

 国立病院機構指宿医療センター 総合内科
 中 村 一 彦

指宿 菜の花通信(No.26)「田舎医者の流儀(1)・・・まず診る」

午前中の診察を終え、ほっとして昼飯を食べていた。そこに外来看護師から「胸が痛いという患者さんがみえています」と電話があった。受付時間内に来れば良いのにと一瞬ムッとしながら「胸のレントゲンと心電図を撮っておいて」と言おうと思った。しかし、かねがね若い医師に患者さんの顔を見てから、検査を出しなさいと言っている手前、診察しようと思い直して、昼飯を途中で止めて診察室に下りて行った。

50歳代の小柄な女性がうつむき加減に診察室に入ってきた。「胸が痛いのはいつからですか」「前からです」「いつ頃からですか」「わかりません」「胸のどこが痛みますか」「全体です」「痛みは持続的ですか、発作的ですか」「全部痛いです」という会話の後、診察しましょうと言った。なにか、もじもじしている。「診察しますので上の服をとって下さい」。胸の下着に血が付いていて、左乳房の一部が潰瘍化、出血している。一見して、乳がんで表面が潰瘍化していると考えられた。外科に確定診断をお願いした。診もしないで、検査に出したら恥ずかしい思いをするところだった。

前の病院にいた頃の事だが、「胃が痛い」と60代の男性が受診した。顔面苦悶状でうっすらと冷や汗をかいている。今朝、胃が痛いので某大病院を受診した、診察なしに胃の検査にまわされた。医師は出来上がったレントゲン写真をみながら、胃に異常はないと言った。患者さんが言うには「写真だけみて私の顔は一度も見なかった」という。「苦しいのですが」と言ったけど、胃はどうもないとの一点ばりで、それ以上は聞いてもらえなかったという。違う病院で診てもらおうと来院したという、一見して重症感があった。すぐ心電図をとり、急性心筋梗塞と診断し、緊急入院となった。最初の医師が患者さんの顔を一瞥していたなら、何らかの次の手が打てたように思う。

ヴァイオリンの銘器ストラディバリウスは本物か否かを見分ける確かな方法はなく、ヴァイオリン商はそれを独特の勘で見分けて行くのだそうだ。良いヴァイオリンを見極めるには1秒も掛からないという(本物を見極める…佐藤輝彦著)。そう簡単にいくわけだはないだろうが、勘の占める部分が大きいのだろう。病気の診断も簡単ではないが、訴えを聞き、診察をして大凡の見込みを付ける。思い込みは良くないが、勘も大事である。

日々の診察の積み重ねの中でそれを磨いていかなければならない。間違いを避けるためには冷静に裏付けを取っていく。現在の医学は検査法が進歩しているので、裏付けを取る事は我々が医師になった4~50年前に比べるとはるかに容易になってきている。それでも検査が先ではない、愚直に患者さんの話を聞き、診察をして、検査で裏付けして行くという順番が大事であると思っている。

平成23年12月9日

 国立病院機構指宿医療センター 総合内科
 中 村 一 彦

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指宿 菜の花通信(No.27)「田舎医者の流儀(2)・・・今年はどんな年だったのか・・・」

一年が過ぎるのが早い、もう今年も終わりそうだ。齢68歳にもなると、特にそう感じてしまう。年をとると代謝が鈍くなり、実時間をより長く感じ、そのため逆に一日が短くなるのだそうだ。そうは言っても、我が人生の一年である事に変わりはない。

3月11日の東北関東大震災は2万人近い人が犠牲になった。「想定外」の大地震・津波であったと云われている。我々は「想定外」と言っているが、知らないからそう言っているだけかもしれない。36億年の地球の歴史の中では「想定内」なのかも知れない。867年に起こった貞観三陸地震は今度の大震災と同程度の大地震・津波であったという。しかし、その記録があるわけではない。地質学的調査で証拠が集まってきている。地震の記載のあるのは日本書記(5世紀)が最初という。日本列島の長い歴史(約13000年)の中で文字記録が残っているのはわずか1500~1600年位の事で、それ以前の長い歴史ことを我々は十分には知らない。

20世紀初めロシアに隕石が落ちた。その時の様子が「1908年6月30日、シベリアの僻地、上空8キロメートルの地点で爆風が発生し、一帯が壊滅的な被害を受けた。近くの森で火事が発生し、2600平方メートルを越える範囲で8000万本の木がなぎ倒された」「落下した物体の直径は30メートルであり、地球にぶつかるのは100年に1回程度だ。・・・50メートルの隕石は1000年に一度」(すべてはどのように終わるのか・・・How It Ends from You to the Universe :クリス・インピー 小野木明恵訳)と記載されている。

この星・地球には制御できない危険―地震、津波、火山、気候変動、大型隕石落下などーに満ちている。その中で我々は核物質の最終処理を出来ないまま、原発を利用している。これが制御できない危険に出会ったのが、今回の福島原発の事故となる。この大災害は我々に今一度立ち止まって、今後の「有様」を考えるよう求めているように思う。

この大災害の中でも我々の日常は流れていく。NHO指宿病院での総合内科医としての生活も3年目、今迄、循環器専門医として仕事をしてきたので、内科全般の患者さんを診ることは勉強させられる。しかし、そのことは結構楽しい。指宿病院の再建も、ここ数年の努力で、おおよそ目鼻が立ちそうだ。ここで働く者としては大変嬉しく思う。もうひとつの仕事、鹿児島県の研修医を増やす活動では、来年80名を超える見通しとなった。この数は6年ぶりである。評論や弁解をしているのみでは事態は改善しない、具体的に改善の姿、数を出していく事が重要と思っている。

平成23年12月27日

 国立病院機構指宿医療センター 総合内科
 中 村 一 彦

指宿 菜の花通信(No.26)「田舎医者の流儀(1)・・・まず診る」

午前中の診察を終え、ほっとして昼飯を食べていた。そこに外来看護師から「胸が痛いという患者さんがみえています」と電話があった。受付時間内に来れば良いのにと一瞬ムッとしながら「胸のレントゲンと心電図を撮っておいて」と言おうと思った。しかし、かねがね若い医師に患者さんの顔を見てから、検査を出しなさいと言っている手前、診察しようと思い直して、昼飯を途中で止めて診察室に下りて行った。

50歳代の小柄な女性がうつむき加減に診察室に入ってきた。「胸が痛いのはいつからですか」「前からです」「いつ頃からですか」「わかりません」「胸のどこが痛みますか」「全体です」「痛みは持続的ですか、発作的ですか」「全部痛いです」という会話の後、診察しましょうと言った。なにか、もじもじしている。「診察しますので上の服をとって下さい」。胸の下着に血が付いていて、左乳房の一部が潰瘍化、出血している。一見して、乳がんで表面が潰瘍化していると考えられた。外科に確定診断をお願いした。診もしないで、検査に出したら恥ずかしい思いをするところだった。

前の病院にいた頃の事だが、「胃が痛い」と60代の男性が受診した。顔面苦悶状でうっすらと冷や汗をかいている。今朝、胃が痛いので某大病院を受診した、診察なしに胃の検査にまわされた。医師は出来上がったレントゲン写真をみながら、胃に異常はないと言った。患者さんが言うには「写真だけみて私の顔は一度も見なかった」という。「苦しいのですが」と言ったけど、胃はどうもないとの一点ばりで、それ以上は聞いてもらえなかったという。違う病院で診てもらおうと来院したという、一見して重症感があった。すぐ心電図をとり、急性心筋梗塞と診断し、緊急入院となった。最初の医師が患者さんの顔を一瞥していたなら、何らかの次の手が打てたように思う。

ヴァイオリンの銘器ストラディバリウスは本物か否かを見分ける確かな方法はなく、ヴァイオリン商はそれを独特の勘で見分けて行くのだそうだ。良いヴァイオリンを見極めるには1秒も掛からないという(本物を見極める…佐藤輝彦著)。そう簡単にいくわけだはないだろうが、勘の占める部分が大きいのだろう。病気の診断も簡単ではないが、訴えを聞き、診察をして大凡の見込みを付ける。思い込みは良くないが、勘も大事である。

日々の診察の積み重ねの中でそれを磨いていかなければならない。間違いを避けるためには冷静に裏付けを取っていく。現在の医学は検査法が進歩しているので、裏付けを取る事は我々が医師になった4~50年前に比べるとはるかに容易になってきている。それでも検査が先ではない、愚直に患者さんの話を聞き、診察をして、検査で裏付けして行くという順番が大事であると思っている。

平成23年12月9日

 国立病院機構指宿医療センター 総合内科
 中 村 一 彦