独立行政法人国立病院機構指宿医療センター

月アーカイブ: 4月 2013

指宿 菜の花通信(No.44)「田舎医者の流儀(19)・・・営業」

齢70にして、初めて営業活動をすることとなった。県内各地の病院を訪問し、昨年、県医師会が立ち上げた「かごしま救急医療遠隔画像センター」を案内、ご利用をお願いしている。今まで、立場上お願いされることはあっても、することがなかったので、お願いをする「営業」活動は結構気疲れするものだ。

前任の病院を定年退職して、国立病院機構指宿病院の非常勤医師(3日/週)となった。通勤はJR指宿線に乗って約1時間、それまで市内の病院しか勤めたことがなかったので、遠方の汽車通勤は初めてだ。朝6:00に家を出るので、5時前に起きて準備を始めなければならない。年とともに早く眼が覚めるのでそれほど苦痛を感じるわけではない、冬場はまだ真っ暗の中を出て行く。

指宿病院に赴任して、院長から頂いた辞令は「総合内科医」を命じるであった。それまで40年間、循環器内科の専門医としてやってきたが、総合内科医としての診療が始まった。たまに循環器系の患者さんが見えて「今日は循環器専門の先生は見てくいやらんとな」と言われたりする。それでも、マラリアやリューマチ関連疾患(RS3PE症候群)の患者さんを、専門医の助けを借りながら見せて頂いたりしている。総合内科を担当した事で今まで経験したことのない、新しい疾患との出会いがある。

最近はコンピュターが進歩しているので、不確かな知識は本をめくらなくともその場で検索できる。うまく利用するとストレス少なく仕事ができる。私は、今まで鹿児島市の大きな病院でしか診療して来なかったので、地方の中核的医療機関での診療は初めてである。介護と近いところでの医療現場の経験も勉強になっている。それにしても、今の医療政策は大都会中心で地方の現状を踏まえていないと思う。

定年後、もう一つ始めたのが、研修医確保の仕事である。基幹型研修病院、鹿児島県、県医師会、鹿児島大学病院などが連絡協議会を作って、減った研修医の確保対策を行っている。事務局は県庁の地域医療整備課が担当している。そこに、机があって、特別顧問という肩書きで週に1回打ち合わせに行っている。それまで行政との接点はなかったので、それもまた、新鮮な経験である。一緒に仕事をして、県庁マンの優秀さに感嘆させられる。行政の持つこの力を利用(?)しない手はないように思う。

定年後、県医師会の常任理事もしている。定年は節目であるので、さっさと後任に譲れば良い。今までの小さな「権益」にこだわらなければ、新しい、楽しい世界に出会えるように思う。

平成25年4月30日

 国立病院機構指宿医療センター 総合内科
 中 村 一 彦

指宿 菜の花通信(No.43)「田舎医者の流儀(18)・・・アベノミクス」

我々は心不全の患者さんがみえると、胸部レントゲン、心電図、心エコー、血液検査などを行い、病態を評価、治療にかかる。いずれにしろ、この病態では肺、その他の部位にうっ血があるので、利尿剤や強心剤を使って、尿を出し、うっ血の改善を図る。苦しみを取る、対症的治療が優先する。多くのケースは注射や薬で何とかなる。どうにもならない時には小型の補助人工心臓などを一時的に使うこともある。

かつて、我々は心機能が低下し、心不全を起こしている場合、強心剤(ジギタリス剤など)を使って最大限心機能を強化しようとした。ジギタリス剤を最大限に使える医師が一人前の内科医師の証でもあった。心不全が改善していないと、ジギタリスの使い方が足りないとお叱りを受けた。ジギタリスは過剰になると中毒症状を起こすので兼ね合いが難しかった。考え方として、力の弱った心臓をひっぱたいて、事態を改善しようとしていた。症状が改善すると、それで「よし」とし、それ以上の事は考えなかった。

ところが、スウエーデンの医師(Waagstein:1975年)がβ―遮断剤を使うと心機能が改善し、予後も良くなるという論文を発表した。当時、心機能を低下させる方向のこの薬を使うことは禁忌と考えられていた。ある内科医が心不全の患者にこのβ―遮断剤(インデラール)を使って、非常識だと非難された事を思い出す。しかし、その後の多くの研究でβ―遮断剤を使った方が予後を良くする(寿命が伸びる、死亡率が減る)事が明らかになってきた。心不全が起こると、体のホルモンや神経系は心臓を引っぱたき、血管を収縮させる方向に働く。これは心不全という病態に対し、生体の防御機能が働いた結果である。

しかし、これが持続すると、結果として逆に心臓に負荷になってしまう。その過剰な防御機構を薬(β―遮断剤など)で抑制した方が予後を改善する。つまり、心不全はうっ血を良くする対症療法だけではなく、その根本となっている病態を改善することにより、全体が良くなり、予後も改善すると理解されるようになった。

昨年末の総選挙で自民党が大勝し、安倍内閣が誕生した。低迷した経済状況を改善するため、次々に対症療法的政策が打ち出され、アベノミクスのとか言われて景気回復の期待感で沸き立っている。しかし、冷静に考えれば、対症療法はそれだけのもので、それを続けていくと、根本のところは改善されず、逆に疲弊して行く可能性がある。弱った心臓をひっぱたく治療のみでは心不全の予後を改善出来なかった歴史に思いを馳せながら、経済の根本のところを改善する施策がどう打たれるのか、田舎医者は注視し、見守っている。

平成25年4月5日

 国立病院機構指宿医療センター 総合内科
 中 村 一 彦

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指宿 菜の花通信(No.44)「田舎医者の流儀(19)・・・営業」

齢70にして、初めて営業活動をすることとなった。県内各地の病院を訪問し、昨年、県医師会が立ち上げた「かごしま救急医療遠隔画像センター」を案内、ご利用をお願いしている。今まで、立場上お願いされることはあっても、することがなかったので、お願いをする「営業」活動は結構気疲れするものだ。

前任の病院を定年退職して、国立病院機構指宿病院の非常勤医師(3日/週)となった。通勤はJR指宿線に乗って約1時間、それまで市内の病院しか勤めたことがなかったので、遠方の汽車通勤は初めてだ。朝6:00に家を出るので、5時前に起きて準備を始めなければならない。年とともに早く眼が覚めるのでそれほど苦痛を感じるわけではない、冬場はまだ真っ暗の中を出て行く。

指宿病院に赴任して、院長から頂いた辞令は「総合内科医」を命じるであった。それまで40年間、循環器内科の専門医としてやってきたが、総合内科医としての診療が始まった。たまに循環器系の患者さんが見えて「今日は循環器専門の先生は見てくいやらんとな」と言われたりする。それでも、マラリアやリューマチ関連疾患(RS3PE症候群)の患者さんを、専門医の助けを借りながら見せて頂いたりしている。総合内科を担当した事で今まで経験したことのない、新しい疾患との出会いがある。

最近はコンピュターが進歩しているので、不確かな知識は本をめくらなくともその場で検索できる。うまく利用するとストレス少なく仕事ができる。私は、今まで鹿児島市の大きな病院でしか診療して来なかったので、地方の中核的医療機関での診療は初めてである。介護と近いところでの医療現場の経験も勉強になっている。それにしても、今の医療政策は大都会中心で地方の現状を踏まえていないと思う。

定年後、もう一つ始めたのが、研修医確保の仕事である。基幹型研修病院、鹿児島県、県医師会、鹿児島大学病院などが連絡協議会を作って、減った研修医の確保対策を行っている。事務局は県庁の地域医療整備課が担当している。そこに、机があって、特別顧問という肩書きで週に1回打ち合わせに行っている。それまで行政との接点はなかったので、それもまた、新鮮な経験である。一緒に仕事をして、県庁マンの優秀さに感嘆させられる。行政の持つこの力を利用(?)しない手はないように思う。

定年後、県医師会の常任理事もしている。定年は節目であるので、さっさと後任に譲れば良い。今までの小さな「権益」にこだわらなければ、新しい、楽しい世界に出会えるように思う。

平成25年4月30日

 国立病院機構指宿医療センター 総合内科
 中 村 一 彦

指宿 菜の花通信(No.43)「田舎医者の流儀(18)・・・アベノミクス」

我々は心不全の患者さんがみえると、胸部レントゲン、心電図、心エコー、血液検査などを行い、病態を評価、治療にかかる。いずれにしろ、この病態では肺、その他の部位にうっ血があるので、利尿剤や強心剤を使って、尿を出し、うっ血の改善を図る。苦しみを取る、対症的治療が優先する。多くのケースは注射や薬で何とかなる。どうにもならない時には小型の補助人工心臓などを一時的に使うこともある。

かつて、我々は心機能が低下し、心不全を起こしている場合、強心剤(ジギタリス剤など)を使って最大限心機能を強化しようとした。ジギタリス剤を最大限に使える医師が一人前の内科医師の証でもあった。心不全が改善していないと、ジギタリスの使い方が足りないとお叱りを受けた。ジギタリスは過剰になると中毒症状を起こすので兼ね合いが難しかった。考え方として、力の弱った心臓をひっぱたいて、事態を改善しようとしていた。症状が改善すると、それで「よし」とし、それ以上の事は考えなかった。

ところが、スウエーデンの医師(Waagstein:1975年)がβ―遮断剤を使うと心機能が改善し、予後も良くなるという論文を発表した。当時、心機能を低下させる方向のこの薬を使うことは禁忌と考えられていた。ある内科医が心不全の患者にこのβ―遮断剤(インデラール)を使って、非常識だと非難された事を思い出す。しかし、その後の多くの研究でβ―遮断剤を使った方が予後を良くする(寿命が伸びる、死亡率が減る)事が明らかになってきた。心不全が起こると、体のホルモンや神経系は心臓を引っぱたき、血管を収縮させる方向に働く。これは心不全という病態に対し、生体の防御機能が働いた結果である。

しかし、これが持続すると、結果として逆に心臓に負荷になってしまう。その過剰な防御機構を薬(β―遮断剤など)で抑制した方が予後を改善する。つまり、心不全はうっ血を良くする対症療法だけではなく、その根本となっている病態を改善することにより、全体が良くなり、予後も改善すると理解されるようになった。

昨年末の総選挙で自民党が大勝し、安倍内閣が誕生した。低迷した経済状況を改善するため、次々に対症療法的政策が打ち出され、アベノミクスのとか言われて景気回復の期待感で沸き立っている。しかし、冷静に考えれば、対症療法はそれだけのもので、それを続けていくと、根本のところは改善されず、逆に疲弊して行く可能性がある。弱った心臓をひっぱたく治療のみでは心不全の予後を改善出来なかった歴史に思いを馳せながら、経済の根本のところを改善する施策がどう打たれるのか、田舎医者は注視し、見守っている。

平成25年4月5日

 国立病院機構指宿医療センター 総合内科
 中 村 一 彦