独立行政法人国立病院機構指宿医療センター

月アーカイブ: 5月 2014

指宿 菜の花通信(No.56)「田舎医者の流儀(31)・・・金、銀、銅の話」

オリンピックで優勝すると、金メダル、二位、三位にはそれぞれ銀、銅メダルが与えられる。4年に一回の大会で、世界中の競技者がメダルを目指す。その時点で最高の状態に持って行き、ある面、幸運もないとメダルに届かない。ソチ五輪フィギュアスケートで、見事優勝した羽生結弦選手(19)は震災を乗り越え、栄冠を得た。期待どおりの結果を出した、この若き青年に多くの人々が感動した。一方、期待の大きかった浅田真央選手はメダルに及ばなかった。しかし、彼女の2日目の演技は完璧で、困難を乗り越えた姿が金メダル以上の感動を与えた。

この世で、世界中どこでも「金」の価値は高い。結婚50年で金婚式、それに到達する夫婦は少なく、価値ある事とされている。東京大学の首席卒業生に対し、金時計(実際は銀時計)が「天皇陛下より下賜された」(戦前の話)。我々の若い頃、あの弁護士さんは東大の「金時計組」だそうだとか言って、特別の存在であった。

それぞれの分野で、優れた業績をあげた者に「金」が与えられる。ノーベル賞もある意味価値の高い「金」賞である。しかし、その後も「金」にふさわしい生き方をしないと評価されない。「数学」でノーベル賞を取った学者が株の取引で、儲かる数式を編み出し、アメリカのサブプライムローンの破綻に関与したという、がっかりしてしまう。ドイツの化学者で「窒素固定法」を開発し、ノーベル賞を得た学者がナチスに協力、毒ガスを作り、人殺しに加担したと言う。彼の栄誉は泥にまみれた。彼の奥さん(化学者)はこの事に悲観し、自殺したという。(雑食動物のジレンマ・・・マイケル・ポーラン)

金融界では頂点に立っているはずの「銀行」が「銀」で、規模の小さい「信用金庫」が「金」を名乗っている。今の銀行は社会的使命(公益)に対する認識、対応はとても「金」に値していない、「金」を名乗れなくて当然かもしれない。信用金庫は全部とは言わないが「公益」を重んじ、もうけ主義に走らず、頑張っているところがある。自らを「金庫」と名乗っている以上、それにふさわしい企業でありたいと強く意識しながらやっているという(原発ゼロで日本経済は再生する、吉原毅、角川oneテーマ21)。

医療界で生活する「私」の残り人生も少なくなってきた。「金賞」は貰えそうもないが心意気だけはそれを目指したいと思う。

平成26年5月27日

 国立病院機構指宿医療センター 総合内科
 中 村 一 彦

指宿 菜の花通信(No.55)「田舎医者の流儀(30)・・・動悸(その2)」

心拍数が多くなると動悸を訴えるのが普通であるが、必ずそうなるわけではない。60歳代の男性が、仕事中などに急に目の前が暗くなり、しゃがみ込んでしまうと訴え来院した。以前も同様な事があり、循環器系の検査を受けたが、異常なしと言われたとの事。診察室に入ってきたとき具合が悪そうで、「いつもの具合の悪さと同じようです」と、血圧を測ると上が70mmHgしかない。急いで心電図を記録すると、心房粗動で心拍が異常に速い、血圧低下は頻拍症で起こっていた。「動悸」はしないのですかとしつこく聞いてもないという。動悸というのは自覚症状であるので、そんな事もあるのかと考えさせられた。

心拍数が速くなると、「動悸がする」と表現する。脈が遅くなったら、なんという。実はそれを表す日本語は見当たらない。念のため、ネットで動悸の反意語を検索しても出てこない。実は脈が遅いことは脈を測らないと解らない、それを感じ、自覚することはない。従って、脈が遅いことを自覚する言葉はないと考えられる。心拍が5秒以上ないと通常失神発作が起こる。医師は脈の極端に遅い患者さんの方がより要注意と考える。

緊張すると脈拍は増えて、動悸として感じる。若いすてきなご婦人の前に行くとドキドキする。もっとも、70を越えた爺さんは今やそんな事もなくなった。ゴルフで久しぶりに良いスコアーが出そうなとき、終わりのホールに近づくと緊張しているのかミスが続く。こんな時だけ、70歳の心は若者の心になってしまう、残念な事だ。

疫学的研究によれば、心拍数が遅い人が速い人より長生きである。36年間の追跡調査を行ったフラミンガム・スタディによれば、高血圧症患者では心拍数が増えると共に心血管系疾患死、全死亡共、男女共高くなる。心拍数85以上の人の全死亡は65未満に比し2倍以上である。日本人のデータでも、有名な福岡県田主丸の研究で心拍数60台に比し、90以上は2倍以上の死亡率を示している。その原因は十分解明されているわけではないが、「頻脈の背景に血圧上昇とは独立した交感神経の亢進があり、それが動脈硬化を促進する」(Juriusら)という説がある。

交感神経の緊張は脈の増加、血圧の上昇を、副交感神経の緊張は徐脈の方向、リラクセーションを起こす。心拍が遅い方が長生きするというなら、経済も右肩上がりのみでは長生き出来ないということか。減速しないと地球も長生き出来ないのかもしれない。

平成26年5月1日

 国立病院機構指宿医療センター 総合内科
 中 村 一 彦

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指宿 菜の花通信(No.56)「田舎医者の流儀(31)・・・金、銀、銅の話」

オリンピックで優勝すると、金メダル、二位、三位にはそれぞれ銀、銅メダルが与えられる。4年に一回の大会で、世界中の競技者がメダルを目指す。その時点で最高の状態に持って行き、ある面、幸運もないとメダルに届かない。ソチ五輪フィギュアスケートで、見事優勝した羽生結弦選手(19)は震災を乗り越え、栄冠を得た。期待どおりの結果を出した、この若き青年に多くの人々が感動した。一方、期待の大きかった浅田真央選手はメダルに及ばなかった。しかし、彼女の2日目の演技は完璧で、困難を乗り越えた姿が金メダル以上の感動を与えた。

この世で、世界中どこでも「金」の価値は高い。結婚50年で金婚式、それに到達する夫婦は少なく、価値ある事とされている。東京大学の首席卒業生に対し、金時計(実際は銀時計)が「天皇陛下より下賜された」(戦前の話)。我々の若い頃、あの弁護士さんは東大の「金時計組」だそうだとか言って、特別の存在であった。

それぞれの分野で、優れた業績をあげた者に「金」が与えられる。ノーベル賞もある意味価値の高い「金」賞である。しかし、その後も「金」にふさわしい生き方をしないと評価されない。「数学」でノーベル賞を取った学者が株の取引で、儲かる数式を編み出し、アメリカのサブプライムローンの破綻に関与したという、がっかりしてしまう。ドイツの化学者で「窒素固定法」を開発し、ノーベル賞を得た学者がナチスに協力、毒ガスを作り、人殺しに加担したと言う。彼の栄誉は泥にまみれた。彼の奥さん(化学者)はこの事に悲観し、自殺したという。(雑食動物のジレンマ・・・マイケル・ポーラン)

金融界では頂点に立っているはずの「銀行」が「銀」で、規模の小さい「信用金庫」が「金」を名乗っている。今の銀行は社会的使命(公益)に対する認識、対応はとても「金」に値していない、「金」を名乗れなくて当然かもしれない。信用金庫は全部とは言わないが「公益」を重んじ、もうけ主義に走らず、頑張っているところがある。自らを「金庫」と名乗っている以上、それにふさわしい企業でありたいと強く意識しながらやっているという(原発ゼロで日本経済は再生する、吉原毅、角川oneテーマ21)。

医療界で生活する「私」の残り人生も少なくなってきた。「金賞」は貰えそうもないが心意気だけはそれを目指したいと思う。

平成26年5月27日

 国立病院機構指宿医療センター 総合内科
 中 村 一 彦

指宿 菜の花通信(No.55)「田舎医者の流儀(30)・・・動悸(その2)」

心拍数が多くなると動悸を訴えるのが普通であるが、必ずそうなるわけではない。60歳代の男性が、仕事中などに急に目の前が暗くなり、しゃがみ込んでしまうと訴え来院した。以前も同様な事があり、循環器系の検査を受けたが、異常なしと言われたとの事。診察室に入ってきたとき具合が悪そうで、「いつもの具合の悪さと同じようです」と、血圧を測ると上が70mmHgしかない。急いで心電図を記録すると、心房粗動で心拍が異常に速い、血圧低下は頻拍症で起こっていた。「動悸」はしないのですかとしつこく聞いてもないという。動悸というのは自覚症状であるので、そんな事もあるのかと考えさせられた。

心拍数が速くなると、「動悸がする」と表現する。脈が遅くなったら、なんという。実はそれを表す日本語は見当たらない。念のため、ネットで動悸の反意語を検索しても出てこない。実は脈が遅いことは脈を測らないと解らない、それを感じ、自覚することはない。従って、脈が遅いことを自覚する言葉はないと考えられる。心拍が5秒以上ないと通常失神発作が起こる。医師は脈の極端に遅い患者さんの方がより要注意と考える。

緊張すると脈拍は増えて、動悸として感じる。若いすてきなご婦人の前に行くとドキドキする。もっとも、70を越えた爺さんは今やそんな事もなくなった。ゴルフで久しぶりに良いスコアーが出そうなとき、終わりのホールに近づくと緊張しているのかミスが続く。こんな時だけ、70歳の心は若者の心になってしまう、残念な事だ。

疫学的研究によれば、心拍数が遅い人が速い人より長生きである。36年間の追跡調査を行ったフラミンガム・スタディによれば、高血圧症患者では心拍数が増えると共に心血管系疾患死、全死亡共、男女共高くなる。心拍数85以上の人の全死亡は65未満に比し2倍以上である。日本人のデータでも、有名な福岡県田主丸の研究で心拍数60台に比し、90以上は2倍以上の死亡率を示している。その原因は十分解明されているわけではないが、「頻脈の背景に血圧上昇とは独立した交感神経の亢進があり、それが動脈硬化を促進する」(Juriusら)という説がある。

交感神経の緊張は脈の増加、血圧の上昇を、副交感神経の緊張は徐脈の方向、リラクセーションを起こす。心拍が遅い方が長生きするというなら、経済も右肩上がりのみでは長生き出来ないということか。減速しないと地球も長生き出来ないのかもしれない。

平成26年5月1日

 国立病院機構指宿医療センター 総合内科
 中 村 一 彦