独立行政法人国立病院機構指宿医療センター

月アーカイブ: 7月 2014

指宿 菜の花通信(No.59)「田舎医者の流儀(34)・・・予知・予測」

先週末、南九州は梅雨明け、真夏の気候になってきた。しばらく、熱帯夜が続くことになる。先週末、北海道函館に行った。夜は上着なしでは肌寒い位であった。夏の北国は涼しく、過ごしやすい。長い夏を鹿児島で過ごす身には、この湿気のない涼しさはなんとも心地よい。早いとこ、夏は北海道、冬は鹿児島で暮らすようになりたい。

今年の春頃の予想ではエルニーニョ現象が起こり、日本は冷夏になるのではと云われていた。しかし、最近の予報では例年と変わらない暑い夏になりそうだという。長期の天気予報は外れる事も多い。我々の世代の感覚では、衛星写真などもあり、天気予報はよく当たるようになった。それでも突然のゲリラ降雨、雷、竜巻などの予報は成功していない。

アメリカの気象学者エドワード・ロレンツは「予測可能性について-ブラジルで蝶が羽ばたくとテキサスで竜巻が起きるか」と題する講演を行い、初期条件のわずかな違いが結果を大きく左右しうるとした(1972年)(科学は大災害を予測できるか・・・フロリン・ディアク著、文春文庫)。予報が外れると、気象庁は非難されることが多い。しかし、そもそも気候・気象はカオスの世界で、外れるのはある面必然と考えたが良い。

我々の住む地球は生きた星である。地震、津波、火山、台風、小惑星の衝突など、災害を起こす事象に満ちている。出来る事なら予知して、被害を最小限に食い止めたい。地震の予知は現在の「技術」「知識」では成功していない。予知したかの報道が時々あるが、現実に神戸大震災、東北大震災は予知されなかった。今後も南海トラフ巨大地震の危険が指摘されている。しかし、何時、どんな規模で起こるかは不確かである。現時点では、地震の予知は不可能として、対応策を立てることが現実的である。

病気の予知も出来ればよろしいが、現実は難しい。例えば、心筋梗塞はなんの前触れもなく、突然起こることが多い。心筋梗塞は起こると依然として30%近い死亡率である。胸部、顎を締め付ける、左背部痛などが前駆症状としてあることがある。症状のないとき心電図検査をしても異常所見のないことも多い。症状のある時は医師に相談して欲しい。30年位前だが、40代歯科医の先生が胸痛あり来院された。精査を勧めたがどうしても入院できないと云われた。その数日後に新聞に死亡広告が出た。今なら説得する自信があるがその時は出来なかった。今でも、辛い思い出である。

平成26年7月30日

 国立病院機構指宿医療センター 総合内科
 中 村 一 彦

指宿 菜の花通信(No.58)「田舎医者の流儀(33)・・・新臨床研修制度10年」

先週末は大阪レジナビ(医学生対象の研修病院説明会)、その前の週末は岡山で出前セミナー(鹿児島出身の医学生に鹿児島県臨床研修の実情を説明する会)、その前は久留米、今週は大分で出前セミナー、その次は東京レジナビ、金沢でも出前セミナーを準備している。全部は出席出来ないが殆ど出かけている。本県の初期臨床研修医を増やす活動の一環で、地を這うような努力をしないと地方の研修医確保は難しい。

平成16年、新臨床研修制度が始まる前は鹿児島県に100名以上の新人医師が供給されていた。しかし、この制度が始まり県外へ流出が起こり、平成21年は54名まで激減した。平成21年度より、組織的な対策を始めた。その結果、平成24年90名を確保したが、25年、26年は75名、73名で、結果を出せない。責任のある立場の方が「医学生の気持ちを十分汲み切っていない」のではと批判される。その通りと思うが対策方は出てこない。

都会の有名病院、全国チエーンの病院群が豊富な資金力と実務能力で研修医確保に走る。今回の大阪レジナビでも我々鹿児島県は一ブース(それでも35万円)の出展であるが、ある全国チエーンは10倍程度のブースを展開、多くのスタッフを動員している。当然、多くの研修医を確保する。医療も競争原理化で動くべきだと考える「新自由主義者」には好ましい光景かもしれない。しかし、この制度が始まって、地方は深刻な医師不足に陥った。

研修医の多く集まる病院は選考段階で、優秀な医学生を確保する。「出来の悪い」研修医は当然排除される。現実はメンタルや基本的能力に問題を有する研修医が一割近くいる。文部省が認めた医学部を卒業し、医師国家試験に合格すると研修医となる。その中に、研修プログラムを十分なサポートなしには履行できない者がいる。

そうした研修医は有名研修病院からは排除されるので、研修医の少ない、指導医も多くない病院に行くことになる。臨床研修を2年間やり、決められた課題をクリアーしないと終了証を発行出来ない。それがないと保険診療が出来ないので、現実的に医師としての診療は難しくなる。国が医師免許を与えた者に地方の一病院で「研修終了」を出さない事などしにくい。

そうした研修医をサポートし、「研修終了」させるために、つきっきりで指導をしている「指導医」の存在は知られていない。彼らがこの制度の不備を「自己犠牲」で支えている。

平成26年7月11日

 国立病院機構指宿医療センター 総合内科
 中 村 一 彦

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指宿 菜の花通信(No.59)「田舎医者の流儀(34)・・・予知・予測」

先週末、南九州は梅雨明け、真夏の気候になってきた。しばらく、熱帯夜が続くことになる。先週末、北海道函館に行った。夜は上着なしでは肌寒い位であった。夏の北国は涼しく、過ごしやすい。長い夏を鹿児島で過ごす身には、この湿気のない涼しさはなんとも心地よい。早いとこ、夏は北海道、冬は鹿児島で暮らすようになりたい。

今年の春頃の予想ではエルニーニョ現象が起こり、日本は冷夏になるのではと云われていた。しかし、最近の予報では例年と変わらない暑い夏になりそうだという。長期の天気予報は外れる事も多い。我々の世代の感覚では、衛星写真などもあり、天気予報はよく当たるようになった。それでも突然のゲリラ降雨、雷、竜巻などの予報は成功していない。

アメリカの気象学者エドワード・ロレンツは「予測可能性について-ブラジルで蝶が羽ばたくとテキサスで竜巻が起きるか」と題する講演を行い、初期条件のわずかな違いが結果を大きく左右しうるとした(1972年)(科学は大災害を予測できるか・・・フロリン・ディアク著、文春文庫)。予報が外れると、気象庁は非難されることが多い。しかし、そもそも気候・気象はカオスの世界で、外れるのはある面必然と考えたが良い。

我々の住む地球は生きた星である。地震、津波、火山、台風、小惑星の衝突など、災害を起こす事象に満ちている。出来る事なら予知して、被害を最小限に食い止めたい。地震の予知は現在の「技術」「知識」では成功していない。予知したかの報道が時々あるが、現実に神戸大震災、東北大震災は予知されなかった。今後も南海トラフ巨大地震の危険が指摘されている。しかし、何時、どんな規模で起こるかは不確かである。現時点では、地震の予知は不可能として、対応策を立てることが現実的である。

病気の予知も出来ればよろしいが、現実は難しい。例えば、心筋梗塞はなんの前触れもなく、突然起こることが多い。心筋梗塞は起こると依然として30%近い死亡率である。胸部、顎を締め付ける、左背部痛などが前駆症状としてあることがある。症状のないとき心電図検査をしても異常所見のないことも多い。症状のある時は医師に相談して欲しい。30年位前だが、40代歯科医の先生が胸痛あり来院された。精査を勧めたがどうしても入院できないと云われた。その数日後に新聞に死亡広告が出た。今なら説得する自信があるがその時は出来なかった。今でも、辛い思い出である。

平成26年7月30日

 国立病院機構指宿医療センター 総合内科
 中 村 一 彦

指宿 菜の花通信(No.58)「田舎医者の流儀(33)・・・新臨床研修制度10年」

先週末は大阪レジナビ(医学生対象の研修病院説明会)、その前の週末は岡山で出前セミナー(鹿児島出身の医学生に鹿児島県臨床研修の実情を説明する会)、その前は久留米、今週は大分で出前セミナー、その次は東京レジナビ、金沢でも出前セミナーを準備している。全部は出席出来ないが殆ど出かけている。本県の初期臨床研修医を増やす活動の一環で、地を這うような努力をしないと地方の研修医確保は難しい。

平成16年、新臨床研修制度が始まる前は鹿児島県に100名以上の新人医師が供給されていた。しかし、この制度が始まり県外へ流出が起こり、平成21年は54名まで激減した。平成21年度より、組織的な対策を始めた。その結果、平成24年90名を確保したが、25年、26年は75名、73名で、結果を出せない。責任のある立場の方が「医学生の気持ちを十分汲み切っていない」のではと批判される。その通りと思うが対策方は出てこない。

都会の有名病院、全国チエーンの病院群が豊富な資金力と実務能力で研修医確保に走る。今回の大阪レジナビでも我々鹿児島県は一ブース(それでも35万円)の出展であるが、ある全国チエーンは10倍程度のブースを展開、多くのスタッフを動員している。当然、多くの研修医を確保する。医療も競争原理化で動くべきだと考える「新自由主義者」には好ましい光景かもしれない。しかし、この制度が始まって、地方は深刻な医師不足に陥った。

研修医の多く集まる病院は選考段階で、優秀な医学生を確保する。「出来の悪い」研修医は当然排除される。現実はメンタルや基本的能力に問題を有する研修医が一割近くいる。文部省が認めた医学部を卒業し、医師国家試験に合格すると研修医となる。その中に、研修プログラムを十分なサポートなしには履行できない者がいる。

そうした研修医は有名研修病院からは排除されるので、研修医の少ない、指導医も多くない病院に行くことになる。臨床研修を2年間やり、決められた課題をクリアーしないと終了証を発行出来ない。それがないと保険診療が出来ないので、現実的に医師としての診療は難しくなる。国が医師免許を与えた者に地方の一病院で「研修終了」を出さない事などしにくい。

そうした研修医をサポートし、「研修終了」させるために、つきっきりで指導をしている「指導医」の存在は知られていない。彼らがこの制度の不備を「自己犠牲」で支えている。

平成26年7月11日

 国立病院機構指宿医療センター 総合内科
 中 村 一 彦