独立行政法人国立病院機構指宿医療センター

月アーカイブ: 3月 2015

指宿 菜の花通信(No.66)「田舎医者の流儀(41)・・・話を聞く」

先日、「住民健診で胸部レントゲン写真に異常ありと言われた」と外来に患者さんがみえた。60代の男性で、現在人工透析を受けている、過去に狭心症があり、冠動脈にステントを入れている。心臓の方は昨年末、冠動脈造影検査を受けて問題なしといわれたとのこと。「じゃ胸部写真を撮りましょうか」と言いながら聴診器をあて血圧を測り、「胸が痛いとか、苦しくなるとかの症状はないですか」と尋ねた。「そういえば2~3日前、2時間位胸が苦しかった、冷や汗が出るような強い症状ではなかった」とのこと。それなら、心電図も撮っておきましょうと検査に行ってもらった。

胸部は明らかな異常所見はなかったが、心電図は異常所見が見られた。以前の心電図を出して比較すると明らかに変わっている。血液検査を追加すると、心筋から出る酵素が上昇し、急性心筋梗塞を疑う所見が出た。いろいろ一般検査をして、冠動脈造影をしましょうということになった。結果は予想外のもので、冠動脈のうち、右冠動脈入口部が詰まりかかっていた、左冠動脈の一本も高度狭窄であった。翌日、準救急で冠動脈のバイパス手術を受けることになり、心臓外科のある病院に転院となった。危機一髪であった。

「胸部写真の異常でみえたのですね、わかりました、じゃレントゲン写真を撮りましょう」となっていたら、危うく患者さんに潜んでいる重大な病変を見逃すところであった。患者さんが多い時などついつい基本手順がスキップすることがある。経験45年の老医にして、基本の診察手順の重要性を改めて思い知らされた。

先週、医師国家試験の合否の発表があり、本県の本年4月からの初期臨床研修医が91名と確定した。平成16年から始まった本制度の中で、2番目に多い。過去、平成21年は54名まで落ち込んでいたので、大分回復してきたと言える。オール鹿児島体制で取り組んできた成果が実ってきているのだろう。しかし、一年一年の勝負であって、来年も多いという保証はない。来年に向かって、現在の5年生に対する対策を進めている。今年になって、高知、折尾、東京に行って、医学生に会い、鹿児島での研修を勧める活動(出前セミナー)を続けている。

研修医を獲得するため、多人数を集めての説明会やレジナビフェアー(業者さんが行う就職説明会みたいなもの)への出席など多面的活動を行っている。しかし、最も成果が上がるのは時間もお金もかかるが、直接顔を見ながら話すことだ。患者さんを診察することも、研修医を獲得する活動も相手の話にしっかり耳を澄ますことが基本のようだ。

平成27年3月27日

 国立病院機構指宿医療センター 総合内科
 中 村 一 彦

就職説明会日程について(終了)

平成28年度の採用募集を行います。下記の日程で病院説明会に参加致します。
多くの参加をお待ちしております。

■平成27年4月26日(日)
かごしま県民交流センター(ナース専科合同就職説明会)

■平成27年5月30日(土)
かごしま県民交流センター(国立病院機構就職説明会)

印刷する場合は、別添PDFをご利用ください。

就職説明会(PDF)

指宿 菜の花通信(No.65)「田舎医者の流儀(40)・・・贅沢品」

先々週は指宿のホテル、JR「指宿のたまて箱」共に、中国系のお客さんが多く、混雑していた。中国では旧正月を盛大に祝う、この間7連休になっているという。その休みの間、日本にも多くの観光客が訪れた。日本のテレビは連日「爆買い」と言われる彼らの買い物の様子を伝えた。中には何百万もする高級品をいくつも買う人もいた。デパート等売る方も「特需」が来たかのように売りまくる。なんともすさまじい光景だ。かつてバブルの頃、日本人は同じような行動を取り、世界中のヒンシュクを買った。

通常の贅沢品なら、好きにしたらと言っておれる。しかし、金持ちでないと買えないような「高級品」が医療の世界に入ってきたらどうなる。1錠10万円する肝炎治療薬が出てきている。一クール十二週分の治療をするのに840万円かかる。アメリカの保険会社は、ガン、HIV等の高額治療薬を保険対象外や高い自己負担率にしている。結局その負担に耐えられる金持ちしか治療を受けられない。(堤 未果著、沈みゆく大国アメリカ、集英社)

我々はアメリカではオバマケアーがスタートし(2014年)、医療状況が改善されたと思っていた。しかし、堤さんによるとかえって状況は悪化しているという。低所得者や高齢者のためメディケイト、メディケアーという制度があるがその支払い率が6割から8割で、医師はそれではやっていけず、その保険の人を診ないようになっているという。結局保険証は持っているけれど、医師に診てもらえない、医師は目の前の患者さんと制度の板挟みに苦しんでいるという。

日本では高額な医療も国民皆保険のおかげで、誰でも平等に治療が受けられる。例えば、大動脈弁狭窄症の治療で経カテーテル大動脈弁治療という方法がある。これに使用するバルーン拡張型人工生体弁セットはそれだけで450万円位する。それに手技料、入院費とかかるので、総医療費は500~600万円位となる。しかし、この治療は公的補助(更生医療など)が適用されるので、日本では誰でも治療が受けられる。

今の日本の保険制度では高額な治療も多くは保険でカバーされ、所得にかかわらず、治療を受けられる。日本では公助、共助、自助のバランスで保険制度を作ってきた。しかし、今、混合診療とかいって公助、共助を減らし、自己負担を増やしていこうという方向が密かに進行している。一方で、新しい技術の導入もあり、医療費の上昇は避けられない。その中で国民皆保険制度をどう守っていくのか、国民的議論が求められている。

平成27年3月3日

 国立病院機構指宿医療センター 総合内科
 中 村 一 彦

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指宿 菜の花通信(No.66)「田舎医者の流儀(41)・・・話を聞く」

先日、「住民健診で胸部レントゲン写真に異常ありと言われた」と外来に患者さんがみえた。60代の男性で、現在人工透析を受けている、過去に狭心症があり、冠動脈にステントを入れている。心臓の方は昨年末、冠動脈造影検査を受けて問題なしといわれたとのこと。「じゃ胸部写真を撮りましょうか」と言いながら聴診器をあて血圧を測り、「胸が痛いとか、苦しくなるとかの症状はないですか」と尋ねた。「そういえば2~3日前、2時間位胸が苦しかった、冷や汗が出るような強い症状ではなかった」とのこと。それなら、心電図も撮っておきましょうと検査に行ってもらった。

胸部は明らかな異常所見はなかったが、心電図は異常所見が見られた。以前の心電図を出して比較すると明らかに変わっている。血液検査を追加すると、心筋から出る酵素が上昇し、急性心筋梗塞を疑う所見が出た。いろいろ一般検査をして、冠動脈造影をしましょうということになった。結果は予想外のもので、冠動脈のうち、右冠動脈入口部が詰まりかかっていた、左冠動脈の一本も高度狭窄であった。翌日、準救急で冠動脈のバイパス手術を受けることになり、心臓外科のある病院に転院となった。危機一髪であった。

「胸部写真の異常でみえたのですね、わかりました、じゃレントゲン写真を撮りましょう」となっていたら、危うく患者さんに潜んでいる重大な病変を見逃すところであった。患者さんが多い時などついつい基本手順がスキップすることがある。経験45年の老医にして、基本の診察手順の重要性を改めて思い知らされた。

先週、医師国家試験の合否の発表があり、本県の本年4月からの初期臨床研修医が91名と確定した。平成16年から始まった本制度の中で、2番目に多い。過去、平成21年は54名まで落ち込んでいたので、大分回復してきたと言える。オール鹿児島体制で取り組んできた成果が実ってきているのだろう。しかし、一年一年の勝負であって、来年も多いという保証はない。来年に向かって、現在の5年生に対する対策を進めている。今年になって、高知、折尾、東京に行って、医学生に会い、鹿児島での研修を勧める活動(出前セミナー)を続けている。

研修医を獲得するため、多人数を集めての説明会やレジナビフェアー(業者さんが行う就職説明会みたいなもの)への出席など多面的活動を行っている。しかし、最も成果が上がるのは時間もお金もかかるが、直接顔を見ながら話すことだ。患者さんを診察することも、研修医を獲得する活動も相手の話にしっかり耳を澄ますことが基本のようだ。

平成27年3月27日

 国立病院機構指宿医療センター 総合内科
 中 村 一 彦

平成28年度 看護職員採用試験 募集要項について(終了)

独立行政法人国立病院機構九州グループにて、「平成28年度 看護職員採用試験 募集要項」を掲載しています。
詳しくは、独立行政法人国立病院機構九州グループ 採用情報をご覧ください。

就職説明会日程について(終了)

平成28年度の採用募集を行います。下記の日程で病院説明会に参加致します。
多くの参加をお待ちしております。

■平成27年4月26日(日)
かごしま県民交流センター(ナース専科合同就職説明会)

■平成27年5月30日(土)
かごしま県民交流センター(国立病院機構就職説明会)

印刷する場合は、別添PDFをご利用ください。

就職説明会(PDF)

指宿 菜の花通信(No.65)「田舎医者の流儀(40)・・・贅沢品」

先々週は指宿のホテル、JR「指宿のたまて箱」共に、中国系のお客さんが多く、混雑していた。中国では旧正月を盛大に祝う、この間7連休になっているという。その休みの間、日本にも多くの観光客が訪れた。日本のテレビは連日「爆買い」と言われる彼らの買い物の様子を伝えた。中には何百万もする高級品をいくつも買う人もいた。デパート等売る方も「特需」が来たかのように売りまくる。なんともすさまじい光景だ。かつてバブルの頃、日本人は同じような行動を取り、世界中のヒンシュクを買った。

通常の贅沢品なら、好きにしたらと言っておれる。しかし、金持ちでないと買えないような「高級品」が医療の世界に入ってきたらどうなる。1錠10万円する肝炎治療薬が出てきている。一クール十二週分の治療をするのに840万円かかる。アメリカの保険会社は、ガン、HIV等の高額治療薬を保険対象外や高い自己負担率にしている。結局その負担に耐えられる金持ちしか治療を受けられない。(堤 未果著、沈みゆく大国アメリカ、集英社)

我々はアメリカではオバマケアーがスタートし(2014年)、医療状況が改善されたと思っていた。しかし、堤さんによるとかえって状況は悪化しているという。低所得者や高齢者のためメディケイト、メディケアーという制度があるがその支払い率が6割から8割で、医師はそれではやっていけず、その保険の人を診ないようになっているという。結局保険証は持っているけれど、医師に診てもらえない、医師は目の前の患者さんと制度の板挟みに苦しんでいるという。

日本では高額な医療も国民皆保険のおかげで、誰でも平等に治療が受けられる。例えば、大動脈弁狭窄症の治療で経カテーテル大動脈弁治療という方法がある。これに使用するバルーン拡張型人工生体弁セットはそれだけで450万円位する。それに手技料、入院費とかかるので、総医療費は500~600万円位となる。しかし、この治療は公的補助(更生医療など)が適用されるので、日本では誰でも治療が受けられる。

今の日本の保険制度では高額な治療も多くは保険でカバーされ、所得にかかわらず、治療を受けられる。日本では公助、共助、自助のバランスで保険制度を作ってきた。しかし、今、混合診療とかいって公助、共助を減らし、自己負担を増やしていこうという方向が密かに進行している。一方で、新しい技術の導入もあり、医療費の上昇は避けられない。その中で国民皆保険制度をどう守っていくのか、国民的議論が求められている。

平成27年3月3日

 国立病院機構指宿医療センター 総合内科
 中 村 一 彦