独立行政法人国立病院機構指宿医療センター

月アーカイブ: 8月 2015

指宿メッセージ No.06 昔ながらの日本の医療

 田舎の救急医療が危ない。医師不足、医師の高齢化、医療機関の撤退・閉鎖、救急医療拒否など何処も大変な状況である。頼みのドクターヘリも、昼間は完璧な救急医療を保障できるものの、夜間は全くの無力。どのような形が良いのか、どの地域も頭を悩ませている。

 指宿では「この地で開業しているのであれば、自分の患者は、まずは自分で診るのが当たり前」という考えが基本になっている。他の業種であっても自然な考え方ではないだろうか。そのため、救急搬入先もまずは「かかりつけ医」に、次に「輪番医」に、そして「2次救急医療対応施設」の3段階方式になっている。煩雑、非効率的と思うかもしれないが、救急連絡の話で、1,2,3(イチニのサン)で搬送先が決まるシステム。このシステムのおかげで1次救急や時間外の軽症患者さんを開業医で診てくれるために当院は主に2次救急に専念できる。地域完結型医療を地元の医療機関で役割を分担し、全員で運営しているやり方だ。そのためいわゆる「たらい回し」が指宿地区はほとんどない(年間に1-3件)。また南薩医療圏(2次医療圏)全体の鹿児島市への搬送率が6.9%に対し、指宿地区のみでは2.8%と低くなっている(平成24年急病での救急患者搬送先人員より)。

 当院への年間救急車搬入件数は平成18年283件に対し、平成26年874件と年々増加、今年度の救急車出動件数に対する当院搬入率は約50%を占めており、我々が目指す地域中核病院らしくなってきた(図1)。一方、時間外患者数は減少傾向である。地域の限られた医療資源を有効に使うシステムのおかげである。

図1
ibusuki_messeage_06_01

 さて、夜間急病センターで急患に対応する地域も有る。すっきりとした分かりやすいシステムではあるものの、豊富な医療資源がある都市部では可能なシステムで田舎では維持が困難ではなかろうか。指宿方式は何も新しい方式ではなく、一言で言うと日本の昔ながらの医療の形である。

 各地域によって事情は異なるが、地域にかかわる医療関係者が地域の健康を守ると言う高い意識を持ち、今できる最善の地域救急体制を作るべきである。今、うまく機能している指宿方式も10年後通用するかは残念ながら不明で、時代とともに対応策を考えなくてはならないだろう。

 新たに総合診療専門医が導入される事になったが、単なる形だけの資格に終わらず、実のある制度になってもらいたい。ゆめ「総合診療専門医でないので、地域医療に従事できない」と言う事が無いように願っている。

平成27年8月24日

 国立病院機構指宿医療センター 院長
 田 中 康 博

指宿 菜の花通信(No.71)「田舎医者の流儀(46)・・・慳貪(けんどん)」

日本を代表する企業が不正経理(粉飾決算?)問題で、社長以下関連役員が退任に追い込まれた。社長は記者会見し、「株主様はじめ・・・にご迷惑をお掛けしました」と、まず「株主」様に謝罪した。現代社会においては、消費者・国民、従業員にお詫びするより、まず真っ先に「株主」様にお詫びしなければならないらしい。その株主様はというと「不正経理で、損をした」と訴訟を起こす見込みだという。

株はそもそも資金不足の企業に、その成長を見込んで資金提供し、成功したらその分け前を頂くのが本来の役割であったはず。しかし、今や多くが投機的になり、業績が良いと買われ、少しでも業績が低下すると資金を引き揚げる、そんな運用が主流になってしまった。それが資本主義、市場原理で当たり前の事とされている。しかし、田舎医者には、そんな「慳貪」なやり方は日本の「美学」に反するように思える。

江戸時代の茶人・書家本阿弥光悦の母妙秀は、「何よりも慳貪にして富裕なることを嫌った」という。慳貪とは「欲深くしていつくしみの心がないこと、むごいこと、貪欲な事とあり、つまり自分さえ良ければ他人の事はどうでもいいという者のことだ」という。本阿弥のみではない、日本では良寛、松尾芭蕉、吉田兼好、橘曙覧など多くの先達がそんな生き方をした。自然と共存した彼らは日本人の生き方の原点のように思われる。(清貧の思想 中野孝次著、文芸春秋)。

私の中では、株屋さん達は皆、「慳貪」にして肯定出来る存在ではないと思っていた。しかし最近、新井和宏なる人物は「投資はきれい事で成功する」(ダイヤモンド社)と主張する。彼は大手投資会社ファンドマネジャーとして数兆円を動かしていた。しかし、その生活に矛盾を感じ、体調も優れなくなり、会社を辞め、新たな投資会社を立ち上げた。彼は云う、「前の会社では投資は科学である」と教えられた。今は「私は予測しない、予測は当たらない」「社会に貢献する本物の会社を探し、投資する。株主にも利益を戻す」「困っている時に投資し、事業の発展を助ける」。彼がどこまで本物であるか私には判断できない、しかし、こういう「株屋」さんがいる事自体、嬉しいね。

小泉内閣時代、規制改革が声高に叫ばれ、その先頭に立っていた財界人?がいた。最近、この方は年間で54億円もの所得があったと報じられた。国民は規制緩和の荒波で辛い思いをさせられた、あまりに対照的である。医療者は患者さんという「弱い立場の存在」を「飯の種」にしている。従って、「慳貪」に最も遠い存在でなければならないと自戒する。

平成27年8月4日

 国立病院機構指宿医療センター 総合内科
 中 村 一 彦

当院について 院長あいさつ ロゴマークについて 新病棟のご紹介 病院の理念 病院概要 地域医療支援病院 鹿児島県がん診療指定病院 開放型病院 指宿医療センターヘリポート 臨床研修 地域医療研修センター 情報公開 個人情報ファイル管理簿 文書ファイル管理簿 「情報公開・個人情報保護総合案内所」に関する広報 法令違反に関する外部からの通報手続きについて 節電行動計画 バリアフリー情報 出前講座 絵画展示のご案内 イベントカレンダー DPCデータによる当院の病院指標 平成27年度 病院指標 平成28年度 病院指標 ボランティア募集 新病棟建設工事の進捗状況 医師募集
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平成28年度 看護職員採用試験 募集要項について(第2回追加選考)(終了)

独立行政法人国立病院機構九州グループにて、「平成28年度 看護職員採用試験(第2回) 募集要項」を掲載しています。
詳しくは、独立行政法人国立病院機構九州グループ 採用情報をご覧ください。

指宿メッセージ No.06 昔ながらの日本の医療

 田舎の救急医療が危ない。医師不足、医師の高齢化、医療機関の撤退・閉鎖、救急医療拒否など何処も大変な状況である。頼みのドクターヘリも、昼間は完璧な救急医療を保障できるものの、夜間は全くの無力。どのような形が良いのか、どの地域も頭を悩ませている。

 指宿では「この地で開業しているのであれば、自分の患者は、まずは自分で診るのが当たり前」という考えが基本になっている。他の業種であっても自然な考え方ではないだろうか。そのため、救急搬入先もまずは「かかりつけ医」に、次に「輪番医」に、そして「2次救急医療対応施設」の3段階方式になっている。煩雑、非効率的と思うかもしれないが、救急連絡の話で、1,2,3(イチニのサン)で搬送先が決まるシステム。このシステムのおかげで1次救急や時間外の軽症患者さんを開業医で診てくれるために当院は主に2次救急に専念できる。地域完結型医療を地元の医療機関で役割を分担し、全員で運営しているやり方だ。そのためいわゆる「たらい回し」が指宿地区はほとんどない(年間に1-3件)。また南薩医療圏(2次医療圏)全体の鹿児島市への搬送率が6.9%に対し、指宿地区のみでは2.8%と低くなっている(平成24年急病での救急患者搬送先人員より)。

 当院への年間救急車搬入件数は平成18年283件に対し、平成26年874件と年々増加、今年度の救急車出動件数に対する当院搬入率は約50%を占めており、我々が目指す地域中核病院らしくなってきた(図1)。一方、時間外患者数は減少傾向である。地域の限られた医療資源を有効に使うシステムのおかげである。

図1
ibusuki_messeage_06_01

 さて、夜間急病センターで急患に対応する地域も有る。すっきりとした分かりやすいシステムではあるものの、豊富な医療資源がある都市部では可能なシステムで田舎では維持が困難ではなかろうか。指宿方式は何も新しい方式ではなく、一言で言うと日本の昔ながらの医療の形である。

 各地域によって事情は異なるが、地域にかかわる医療関係者が地域の健康を守ると言う高い意識を持ち、今できる最善の地域救急体制を作るべきである。今、うまく機能している指宿方式も10年後通用するかは残念ながら不明で、時代とともに対応策を考えなくてはならないだろう。

 新たに総合診療専門医が導入される事になったが、単なる形だけの資格に終わらず、実のある制度になってもらいたい。ゆめ「総合診療専門医でないので、地域医療に従事できない」と言う事が無いように願っている。

平成27年8月24日

 国立病院機構指宿医療センター 院長
 田 中 康 博

ふれあい看護体験

ひよこ通信8.11

指宿 菜の花通信(No.71)「田舎医者の流儀(46)・・・慳貪(けんどん)」

日本を代表する企業が不正経理(粉飾決算?)問題で、社長以下関連役員が退任に追い込まれた。社長は記者会見し、「株主様はじめ・・・にご迷惑をお掛けしました」と、まず「株主」様に謝罪した。現代社会においては、消費者・国民、従業員にお詫びするより、まず真っ先に「株主」様にお詫びしなければならないらしい。その株主様はというと「不正経理で、損をした」と訴訟を起こす見込みだという。

株はそもそも資金不足の企業に、その成長を見込んで資金提供し、成功したらその分け前を頂くのが本来の役割であったはず。しかし、今や多くが投機的になり、業績が良いと買われ、少しでも業績が低下すると資金を引き揚げる、そんな運用が主流になってしまった。それが資本主義、市場原理で当たり前の事とされている。しかし、田舎医者には、そんな「慳貪」なやり方は日本の「美学」に反するように思える。

江戸時代の茶人・書家本阿弥光悦の母妙秀は、「何よりも慳貪にして富裕なることを嫌った」という。慳貪とは「欲深くしていつくしみの心がないこと、むごいこと、貪欲な事とあり、つまり自分さえ良ければ他人の事はどうでもいいという者のことだ」という。本阿弥のみではない、日本では良寛、松尾芭蕉、吉田兼好、橘曙覧など多くの先達がそんな生き方をした。自然と共存した彼らは日本人の生き方の原点のように思われる。(清貧の思想 中野孝次著、文芸春秋)。

私の中では、株屋さん達は皆、「慳貪」にして肯定出来る存在ではないと思っていた。しかし最近、新井和宏なる人物は「投資はきれい事で成功する」(ダイヤモンド社)と主張する。彼は大手投資会社ファンドマネジャーとして数兆円を動かしていた。しかし、その生活に矛盾を感じ、体調も優れなくなり、会社を辞め、新たな投資会社を立ち上げた。彼は云う、「前の会社では投資は科学である」と教えられた。今は「私は予測しない、予測は当たらない」「社会に貢献する本物の会社を探し、投資する。株主にも利益を戻す」「困っている時に投資し、事業の発展を助ける」。彼がどこまで本物であるか私には判断できない、しかし、こういう「株屋」さんがいる事自体、嬉しいね。

小泉内閣時代、規制改革が声高に叫ばれ、その先頭に立っていた財界人?がいた。最近、この方は年間で54億円もの所得があったと報じられた。国民は規制緩和の荒波で辛い思いをさせられた、あまりに対照的である。医療者は患者さんという「弱い立場の存在」を「飯の種」にしている。従って、「慳貪」に最も遠い存在でなければならないと自戒する。

平成27年8月4日

 国立病院機構指宿医療センター 総合内科
 中 村 一 彦