ホーム » 指宿 菜の花 通信(No193) 田舎医者の流儀(168)・・・老舗

指宿 菜の花 通信(No193) 田舎医者の流儀(168)・・・老舗

 最近の地元紙によると、鹿児島で100年以上続いている会社は11社、全国には1065社あるそうです。鹿児島の最長寿企業は小園硝子という1922年創業の会社のようです。新たに設立された会社や個人事業が1年後に残っている生存率は約72%、3年後約50%、5年後約40%という。起業された事業のうち5年後は実に6割が潰れていることになる。事業を継続することの難しさを示しており、長寿企業の秘密を知りたくなる。

 世界最古の会社は西暦578年、飛鳥時代から続いている大阪の「金剛組」という建築会社で、寺や神社を建てつづけてきた。西暦593年、難波に四天王寺を完成させたのが、そもそもの仕事始めだったとか。創業、実に1400年。なぜかギネスブックには登録されていないが、間違いなく「現存する世界最古」の会社にして「世界最長者企業」とみられている。

 老舗というと、旅館やお菓子屋さんを思い浮かべる。創業して1300年になろうかという北陸の旅館(石川県にある「法師」という旅館)は養老2年(718年)に開湯して、世界最古のホテルとして、ギネスブックにも認められているそうです。1200年以上の京都の和菓子屋、同じく京都の1100年以上の仏具店、1000年を優に超える薬局といった具合に、開業当時に思いを馳せると、気が遠くなりそうです。鹿児島では安政元年(1854年)創業のかるかんの明石屋が古いようです。

 製造業では古いだけでは決して生き残れないし、絶え間ない技術革新がないと事業の継続は難しいでしょう。ケータイは現代社会においては欠かせないが、なんとここには老舗の技術が多く使われているそうです。着信をぶるぶる震えて知らせる機能、ここになくてはならない特殊な極小ブラシ。これを作っているのは、今年で121年目、もとは東京日本橋にあった「田中商店」という両替商で質屋、現在でも「金」の売買で有名なあの会社だそうです。「金」の加工をやる長い歴史が生かされているようです。

 ケ—タイの折り曲げ部分。ここには、京都にある創業なんと300年の「福田金属箔粉工業」の製品が、もともとは金箔屋さんだった会社の技術が生かされているそうです。ケータイから漏れる電磁波を防ぐ銀の塗料や、ケータイの中の配線基板の小型化を進める部品を開発したのも、この会社といいます。液晶の画面には、静岡で明治時代にランプや鏡台を製造販売していた会社の小さな鏡が多用されているそうです。ケータイの心臓部にあたる発振器。これが極寒の氷の世界でも灼熱の砂漠でも機能するには、神奈川の老舗企業が開発し、世界の特許を持っている発振器が欠かせないそうです。世界最大のケータイメーカーであるフィンランドのノキアの製品にも、組み込まれているそうです。このようにケイタイという現代を象徴する機器に、日本の老舗企業の技術が多く使われていることは驚きですし、感嘆の限りです。

 企業が永続するためには何よりも平和が大事です。それにしても、昨今のロシアの「戦争ごっこ」にはうんざりさせられる。ウクライナへの軍事侵攻の口実は歴史上何度も聞いたことのある「自国民の保護」という言葉だ。かってに緊張を作り出し、自国民が圧迫されているという。ウクライナという小国がロシアに圧迫を掛けれるはずもありません。ありもしない脅威を作り出し、戦争を起こしている。なんとも「理の通らぬ話」で腹立たしい。歴史上の教訓を踏まえ、甘く考えずに国際社会は強い制裁をロシアにプーチンに課すべきであると思う。

 フランス、ドイツなどEUはロシアにエネルギーを依存している。ロシアはそこから圧力をかけてくる。エネルギーにしろ、食料にしろ、他国に大きく依存すると脅しを受けることになる。我が国もそこの自立を長期的に考えていかないと、自国を守れない。そこを強く自覚し、必要な施策を打っていくべきだ。目先の利害だけで国民は守られないと思う。
(参考文献:千年働いてきましたー老舗企業大国ニッポン 野村進著)

 

令和4年3月02日

国立病院機構指宿医療センター 総合内科
 中 村 一 彦