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指宿 菜の花 通信(No194) 田舎医者の流儀(169)・・・怪物を止めろ

 2月24日ロシアのプーチンはウクライナへの侵略を開始した。ウクライナとウクライナ人の尊厳を踏みにじる要求を出し、それを認めないからだと言う、無茶苦茶な話だ。「人道回廊」を設置してウクライナの非戦闘員が安全に避難できるように「人道的配慮」をしていると主張している。しかし、その避難先の多くはロシア国内やロシアの属国ベラルーシになっており、とてもウクライナ人が行けるはずもないルートだ、認めないのはお前たちが悪いからだという。なんという事だ!!

 あろうことか、ウクライナの原発への攻撃も行っている。旧ソビエト時代にあの悲惨なチェルノブイリ原発事故を経験しているのに、分っていて攻撃している。原発への攻撃は一歩間違うとヨーロッパ全体を巻き込む大惨事になる。ある日本人の原子力専門家と言われる人が原子炉格納庫は頑丈にできているので、少々の攻撃では安全性は冒されないような解説をしていたが、情けない議論だ。福島の原発事故でも原子炉格納庫が直接損傷を受けたわけではなく、冷却するシステムが損傷を受けて大事故になった。原発への攻撃は常にそういう危険を伴っている。とても容認できない。更にプーチンは核兵器の使用さえもちらつかせている。まともな判断力を失っているとしか言いようがない。世界中の世論が「怪物を止めろ」(一般紙の見出し)と叫んでいる。

 プーチンは20年間も最高権力者の位置にある。権力は腐るものであることは歴史が証明している。多くの民主主義国は権力者が永くその地位にとどまることを抑制してきた。アメリカの大統領は2期8年を過ぎて大統領になることを禁じている。一般社会でも「停年」を設けて、独裁になることを抑制してきた。プーチンは権力者の位置を確保するために憲法を改正し、選挙になると対立候補を毒殺したり、言いがかりをつけて立候補出来ないようにした。いざ選挙になると「不正選挙」を行い、その地位を確保してきた。この状況を許してきたのはロシア人であり、そのつけは今まさにロシア人の上に降りかかっている。ロシアが再生していくためには当たり前の民主主義的な政治体制に刷新するしかないように思う。

 我が国の近隣にもまともな選挙も行わず、権力を握り続けている指導者がいる。いずれも国民の苦しみをよそに核・ミサイル開発を続け、周りの国に緊張を強いている。国民が自分の意思で指導者を選べる当たり前のシステムの構築をしない限り、平和は訪れない。「アナタは反国家的だ」と権力者が勝手に決めて、まともな裁判もなしに刑務所に入れる国には住みたくない。我が国でも憲法を改悪して、国民の権利を縛ろうとする一派が存在する。憲法は権力者の横暴を縛るためにある。それを理解していない政治家がいる事は悲しい!!

 

令和4年3月09日

国立病院機構指宿医療センター 総合内科
 中 村 一 彦