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指宿 菜の花 通信(No199) 田舎医者の流儀(174)・・・落葉

 先週、農園の野ばらが白い花、モッケイバラが黄色い花を咲かせた。植えてから4年以上経つので樹も大きくなり、見栄えがするようになってきた。友人が黎明館の裏の桐の花が咲いているよと知らせてくれた、見に行った。20メートル位の大木になった桐に薄紫の花が見事に咲いていた。鹿児島医療センターに勤務していたころは歩いて通勤していたので、この時期この花をよく見ていた。それから13年経つので久しぶりの出会いであった。そのころに比べれば桐の木はだいぶ大きくなっていた。そこから中央公園の方に歩いて、ウコン櫻を見た。これも見事に咲いていた。春は花との出会いの時だ。

 この時期、農園には孟宗竹のタケノコが生えてくる。朝行って、一回りして収穫時期を考える。週の真ん中3日間は農園に行けないので、土曜日に大きくなりすぎたタケノコにビックリさせられることもある。丁寧に掘り出して持ち帰り、新鮮なタケノコ料理を楽しんでいる。農園には動物侵入阻止用柵がしてあるが、その支柱の真下からタケノコが生えて、掘り出すのに難儀をした。予測外のところに生えてくるから油断ならない。

 3月下旬の朝、農園に行ったら芝生部分の半分ぐらいを無残に掘り返されていた。イノシシの仕業と考えられた。この農園を開いて6年になるが初めてのことだった。今まで起こらなかったのがラッキーだったのかもしれない。侵入してきたと思える部位に新たに柵をこしらえてもらった。その後3週間位経つが侵入した形跡はない。しかし、侵入できる経路は未だ残っているので、完全に防げるとは思っていない。イノシシとの知恵比べだ。

 コケを植えた部分への落葉除去は厄介だ。この時期、どんぐりの樹などの常緑樹は新しい葉っぱに入れ替わるので、古い葉は落葉する。私の農園では秋の落葉よりこの時期の落葉が多い。コケの上に落ちた葉っぱは箒で掃けないし、ブロアーで吹き飛ばすわけにもいかない。コケも一緒に剥げてしまう。仕方がないので座り込んで、葉っぱを一枚一枚手で除去している。コケを守るためには欠かせない難儀な作業だ。

 こんな生活をしながら、プーチンの暴虐にさらされたウクライナの人々の苦悩に思いを馳せる。ノーベル賞受賞の大隅良典先生は「昨年1月に、初めてロシアを訪れる機会があった。学生時代にはロシア文学を読み漁ったこともあったので、憧れの国の一つだったのだが、ソ連時代のさまざまな報道もあって、自由で豊かだというイメージは持っていなかった。しかし、案内されたモスクワ大学には、歴史ある大きな建物や立派な講堂が保存され、大学の博物館の素晴らしさにも感激した。ロシアで、この大学が歴史の中にしっかり位置づけられていることを知るに十分だった。モスクワ滞在中に急にチケットをアレンジしてもらって音楽会に行くことになったが、会場の雰囲気から市民にとつてコンサートがとても身近なのだと感じた。劇場やバレエなどの施設が市内のあちこちにあるのにも驚いた。
 残念ながら急ぎ足の訪問となったサンクトペテルブルグのエルミタージュ美術館では 修復や保存のために実にたくさんの人が働いていて、文化財が大事にされていることを知った。」
(未来の科学者たちへ 大隅良典・永田和宏 著 角川書店)

 友人のM先生は訪れたサンクトペテルブルグの博物館、美術館のすばらしさを良く話してくれる。そんな深い文化を持つ国がウクライナに暴虐の限りを尽くしている。ロシアの多くの人々は真実を知れば、それを容認しないだろう。プーチンはまず、その圧倒的な暴力を自国民に向けて働かせ、反対勢力を毒殺し、刑務所に入れて、国民が物申せぬようにして、今回の暴挙に至っている。ヒットラー、日本の軍部も圧倒的な暴力で自国民を黙らせ、外国の侵略に向かって行った。

 どの国も真の民主主義を育てていかないと、プーチンのような独裁者を阻止できないのかも知れない。

令和4年4月27日

国立病院機構指宿医療センター 総合内科
 中 村 一 彦