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指宿 菜の花 通信(No209) 田舎医者の流儀(184)・・・メダカは共存を選んだ

 友人のAさんがお兄さんの飼っているメダカを分けてくれた。「青みゆき(青幹之)」という種で、青白いカラーの筋が背中から尾にかけて発色し、輝青色のラインを持っている。池の中に入れるとシルバー系で青白く発光しているよう見え、良く目立つ。楊貴妃メダカと共に改良メダカの人気種である。

 頂いた30匹位を従来飼っていたメダカの池に入れた。飼っていたメダカはホームセンターで買ってきた黒っぽいものや橙系のメダカで、ありふれた種である。このメダカを池に入れた時、先住のメダカが突きまわすような行動をとった。異種が入ってきて、従来のメダカさんは納得できないのかと見守った。一時したら、突きまわるような行動は見せなくなった。その後は仲良く共存し泳ぎ回っている。ネットで調べると、大型のメダカが極小さいメダカを食べることがあるそうだが成人したメダカは仲良く暮らすそうだ。その後、日を経てもメダカたちは共存し、仲良く暮らしている。

 以前も紹介したが、なんとヒトと同じで、魚も相手個体の顔を見て個体識別をしているという。メダカも顔で個体識別をしているとの報告がされている。メダカといえば、童謡に歌われるわれる国民的な魚である。あのメダ力が顔で相手を識別しているのである。よく見るとメダカの目の体側寄りのところに、小さな小判型の模様がある。この小判に個体変異が認められ、どうやらこれで個体識別をしているようだ。メダカはダツ目というスズキ目とは別の系統群に属す。つまり、スズキ目と力ダヤシ目に加え、ダツ目でも顔模様に基づいた視覚による個体認識が確認されたことになる。
(魚にも自分がわかる 幸田正典著 ちくま新書)

 メダカは個体識別が出来るので、今回みたいに異種が入ってくると、異種を認識できると思われる。新しいメダカを入れた直後はよそ者が入ってきたと認識したと思われる。直後に両者が突きあうような行動を見せたのは納得できる。しかし、一時すると両者は仲良く泳ぎ回り「けんか」をするそぶりは見せなくなった。どうも共存する道を選んだようだ。

 人の歴史は、民族により争いごとを繰り返してきた。ヒトラーはアーリア人のみが優秀で、その他の民族を敵視した。特にユダヤ人に対してはその存在すら認めず、アウシュビッツに送り込んで絶滅を計った。現在でも、中国政府によるチベット人に対する弾圧はすさまじく、強制収容所に入れて民族の存在を認めようとしていないようだ。メダカは利口だ、少々の違いを認め合い共存の道を選んでいる。指導者たちよ、少しはメダカに学んだらどうだ !!

令和4年8月24日

国立病院機構指宿医療センター 総合内科
 中 村 一 彦