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指宿 菜の花 通信(No241) 田舎医者の流儀(216)・・・ 四角豆

 秋も深まり朝夕の気温が低く、寒さを感じるようになってきた。10月中頃にはいつものようにキンモクセイが花を付け、甘美な匂いを漂わせた。小山田の農園、城西の自宅、いつも行くゴルフ場共に今年は良く咲いた。シイタケも未だ一個だけだが収穫できた。時期が来たので更に出てくると期待している。Sさんがシイタケの種を植えた木を新たに3本持ってきてくれた。今までのシイタケの樹が3年ぐらいたったので、新しいのを補充したという事だ。心遣いに感謝する。

 農園では四角豆が収穫できている。薄紫の花が綺麗だと思ってみていたらソラマメ大の鞘を付けてきた。大きくなってから取ろうと思って収穫したら、とても硬くて食べられなかった。早い時期に収穫して、ゆがいてみたらとても柔らく美味しく食べられた。キンカンが今年は2本の樹にそれぞれ20個ずつぐらい実を付けている。少し黄色く色付き始めている。いつ収穫できるのか、11月中頃かな。楽しみにしている。植物は時期が来ると花を付け、実がなってくる。まるで「意思」を持っているようなふるまいだ。

 「植物は太陽のエネルギーを使って、二酸化炭素と水からエネルギー源となる糖を作り出す。光合成と言われるシステムだ。動物は植物や他の動物を食べてエネルギー源を得ている。植物は自からエネルギー源を作り出すことができるのだ。これは植物を動物と区別する決定的な違いだ。動物は自分でエネルギーを作り出すことができないから、エサを探さなければならない。草食動物は植物を探し歩き、肉食動物は、獲物となる草食動物を求めて歩き回る。そのため、動物は動かなければならないのである。」

 「現代の私たちは高度なテクノロジーを手に入れているが、驚くことにこの光合成を再現することはできない。光合成に似たような人工光合成は、開発が進んでいるが、植物の葉っぱが当たり前に行なっている光合成の反応を完全に再現することは、現在の科学技術をもってしてもできない。人間の科学は、植物の葉っぱ一枚に敵わないのである。もっとも、植物自身もこの能力を自ら持っているわけではない。かつて植物の祖先が、単純な単細胞生物だったころ、その生物は光合成を行なう小さな単細胞生物を取り込んだ。そして、植物の細胞と共生するようになったのである。このとき取り込まれた小さな単細胞生物が、現在、植物細胞の中で光合成を司る葉緑体である。現在でも葉緑体は、植物細胞の核の中にあるE)NAとは異なる独自のE)NAを持ち、分裂して増殖している。その振る舞いは、まるで独立した生物のようだ」と言う。

(参考文献:植物に死はあるのか 稲垣栄洋 SH新書)

令和5年10月25日

国立病院機構指宿医療センター 総合内科
 中 村 一 彦