ホーム » 指宿 菜の花 通信(No249) 田舎医者の流儀(224)・・・・花粉症の季節

指宿 菜の花 通信(No249) 田舎医者の流儀(224)・・・・花粉症の季節

 花粉症の季節がやってきた。外来診療していても、花粉症に悩まされている患者さんが多い。「体は異物が入ってきたとき、抗体を作って排除しようとする。異物として入ってきた花粉を排除しようと過度に攻撃することで、体にさまざまな症状が起こり、花粉症を発症する」と考えられている。

 異物を排除しようという免疫機能は感染症の発症の抑制・進展の防止など人の体を守る機構として働く。我々の体ではがん細胞が絶えず発生しているが、免疫機能が癌を発症するのを防いでいる。この機能が低下したりすると発がんに繋がる。いったん癌が発症するとがん細胞は免疫が働かない機構を作り、成長する。本庶佑・京都大学特別教授(ノーベル医学賞受賞)はこの機構に注目し、免疫チェックポイント阻害薬を開発、免疫細胞がまともにがんを攻撃できるようにした。従来の抗がん剤と作用機序の異なる薬剤で癌の薬物療法を大きく進展させた。

 免疫機構を利用したワクチン療法は疾病から人を守り、寿命を大きく伸ばしてきた。それでも、反ワクチンの主張は根強く続いた。1998年にイギリスの医師アンドリュー・ウェイクフイールドは「ランセット」に衝撃的論文を発表した。12人の子供のサンプルをもとにMMRワクチン(麻疹、おたふくかぜ、風疹の混合ワクチン)が自閉症と関連していると主張した。MMRワクチンの接種で体内に残った麻疹ウィルスが、腸と脳に関連する症状の原因になっているというものだった。権威のある「ランセット」に掲載されたので波紋は大きく、反ワクチンの機運が高まった。しかし、ウェイクフイールドの論文は信憑性がないことがだんだん判ってきた。1998年以降、MMRワクチン(およびほかのさまざまなワクチン)と自閉症スぺクトラム症のあいだに関連性はまったくないことを示す大規模で厳密な研究がなされた。ウェイクフィールドの論文は2010年にようやく撤回されが12年間も正式な科学文献の一部になっていた。ウイクフィールドはその後、論文作成時不適切な医療行為もあり、イギリスの総合医療評議会で同学会の登録を抹消され、イギリスの医師免許を剥奪された。こんな論文が「ランセット」に掲載されたこと自体が驚きだ。

 2月19日朝、嬉しいニュースが飛び込んできた。ゴルフの松山英樹選手がカリフォルニア州ロサンゼルス郊外のリビエラCCで行われた米男子ツアージェネシス招待(18日終了)で最終日、62をマーク、6打差を逆転して2年ぶり、米ツアー通算9勝目を飾った。昨年は首痛などに悩まされなかなか上位に行けなかったが、今年4試合目にして復活した。このコースは難コースで、あのタイガー・ウッズやマキュロイもここでは優勝出来ていない。松山選手の今後の活躍に期待したい。

(参考文献:Science Fictions あなたが知らない科学の真実 スチュアート・リッチー著ダイヤモン)

令和6年2月28日

国立病院機構指宿医療センター 総合内科
 中 村 一 彦