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指宿 菜の花通信(No.12)「病院ランキング」

最近はなんでもランキングを付けたがる風潮がある。ネットで検索すると様々のランキングが出ている、人気投票みたいなものも多く、そこで上位にランクされるとお客が殺到する。自ら苦労して良い物を探すのではなく、安直に風評に頼る様は現在の世評そのものなのかも知れない。医療界でも様々のランキングが発表され、最近も某有力週刊誌に「頼れる病院ランキング」が発表された。鹿児島県では鹿児島大学病院、鹿児島医療センター、南風病院の順で1~3位であった。ちなみに我が国立病院機構指宿病院は17位であった。

問題はランクの根拠となった事項と点数の配分である。今回のランキングでは医師数、看護師の配置基準、ICUなど高度治療施設の有無、在院日数、経営の収支などである。そういう点数の付け方をするといわゆる都会の大病院が上位にくることになる。例えば、鹿児島医療センターは循環器、脳卒中、ガンに特化した病院で、その専門的な診断・治療を行う病院である。

そういう病院は当然点数が高くなるので上位に来ることになる。一方、指宿病院は地方にあって、地域の医療状況に答えないといけない。ある意味、選り好みしないでなんでも診なくてはいけない。介護と医療が一体となっている側面もある。そういう病院はそうした点数の付け方では上位にはなれない。

上位になれないから文句を言っているのではない。指宿病院は「頼りになる病院」ランキングでは上位に入っていないが、実際は指宿地区の地域医療の中では大いに「頼りに」されている。急患はなんでも引き受けるし、まず断らない。小児科の時間外診療は各地で問題になっているが、当院は当直医がまず診て、大きな問題がない場合は必要な処置をして、翌日小児科受診をお願いしている。実際は、小児科の夜間急患は9割がこれで済むことになる。

もちろん、当直医が診て、問題が有りそうなケースはオンコールで待機する小児科医を呼び出すことになる。2人しかいない小児科医で全てをやることは不可能なのでこういう形で地域の実情に答えざるを得ない。都会と地方の病院を同じ物差しで評価する事は難しい。このランキングは残念ながら、実情を反映していないと言わざるを得ない。

そもそも、病院のランキングを行うのは難しい問題である。否、そういうランキングは無意味なのかもしれない。病院で評価されるべきは「医療の質」であり、「患者さんの満足度」などである。それを反映した指標で評価しないと、都会の効率中心の病院が上位にランクされることになる。医療の質は医療の技術的側面とリスク管理、感染管理、栄養管理などトータルの質が規定している。そもそもランキングが必要ではなく、「品質」が保証されている病院が「頼れる病院」であると思う。

平成22年8月27日

 国立病院機構指宿医療センター 総合内科
 中 村 一 彦