独立行政法人国立病院機構指宿医療センター

月アーカイブ: 2月 2013

指宿 菜の花通信(No.41)「田舎医者の流儀(16)・・・利己的」

我が家の狭い庭に、メジロが飛んで来た。この家に引っ越してきて、20年近くなるが初めてだ。草木にやたら詳しい「家人」は、庭に植えている「真弓」という木の赤い実を食べに来たのかな、しかし、その実は非常に硬いので食べられるのかしらと言う。約50年前(高校生の頃)、今の家の近くに住んでいた。その頃、家の周りは田んぼでカエルが鳴いていて、すぐ近くは山で友人とよく遊びに出かけていた。今や山の上まで団地になってしまった。メジロも居住地が狭くなり、食べ物を探しに来たのであろう。

生き物にとって、第一義的なことは生きることで、そのためには食べなければならない。生き物の全ての行動の根っこになるのは食べること、生きることのように思う。百獣の王と言われるライオンでも体が弱って、獲物を得られなくなると死が待っている。全ての生き物は自らが生きるため、他の命を犠牲にしている。正月、レ・ミゼラブルというミュージカル映画を観た。生きるため一片のパンを盗み、長いこと牢獄に入れられ、出てきても刑事に追われる物語だ。食って、生きて行くことは人にとっても過酷な事だ。

心臓の冠動脈バイパス手術を受けた患者さんで、術後、それまで動かなかった心臓の筋肉が元気よく動き出す現象がある。心臓の勉強を始めた頃、不思議な事もあるものだと思っていた。その後、研究が進み、説明されるようになってきた。心筋が著しい虚血状況になると、動くことが使命の心筋細胞は動きを止め、生きることに専念してくる。かろうじて生き延びた心筋細胞は、バイパス手術により血流が回復すると本来の働きである収縮・弛緩を回復する。この現象は「冬眠現象」と名付けられた。心筋が動かなくなると、心臓は血液を送り出せなくなり、個体、人様は死んでしまうことになる。個体が死んでしまったら、細胞も死んでしまう。そんなことはお構いなしに、心筋細胞は「利己的」に生き残ろうとする。そんなことをよくやるものだと思う。

我々を構成する60兆個の細胞はそもそも利己的だということだろう。その細胞から出来た個体、ヒトが利己的であってもなんにも不思議ではなかろう。ただヒトは他の生物種と違って、高度に発達した「脳」を持ち、「理性」というものを持ち合わせている。欲望のままに生きないためのルールを作ってきた。しかし、食糧がなくなり、富の分配に著しい不公平が生じると争い、戦争が起こる。

「ウツ族」が政権を取ると、「フツ族」は追い出され、皆殺しに合う、その逆もまた起こる。そもそも利己的に出来ているヒトという生物種に、富を分配し、お互いを認めあい、「人」として平和に暮らすように求めることは無理なのだろうか。

平成25年2月8日

 国立病院機構指宿医療センター 総合内科
 中 村 一 彦

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指宿 菜の花通信(No.41)「田舎医者の流儀(16)・・・利己的」

我が家の狭い庭に、メジロが飛んで来た。この家に引っ越してきて、20年近くなるが初めてだ。草木にやたら詳しい「家人」は、庭に植えている「真弓」という木の赤い実を食べに来たのかな、しかし、その実は非常に硬いので食べられるのかしらと言う。約50年前(高校生の頃)、今の家の近くに住んでいた。その頃、家の周りは田んぼでカエルが鳴いていて、すぐ近くは山で友人とよく遊びに出かけていた。今や山の上まで団地になってしまった。メジロも居住地が狭くなり、食べ物を探しに来たのであろう。

生き物にとって、第一義的なことは生きることで、そのためには食べなければならない。生き物の全ての行動の根っこになるのは食べること、生きることのように思う。百獣の王と言われるライオンでも体が弱って、獲物を得られなくなると死が待っている。全ての生き物は自らが生きるため、他の命を犠牲にしている。正月、レ・ミゼラブルというミュージカル映画を観た。生きるため一片のパンを盗み、長いこと牢獄に入れられ、出てきても刑事に追われる物語だ。食って、生きて行くことは人にとっても過酷な事だ。

心臓の冠動脈バイパス手術を受けた患者さんで、術後、それまで動かなかった心臓の筋肉が元気よく動き出す現象がある。心臓の勉強を始めた頃、不思議な事もあるものだと思っていた。その後、研究が進み、説明されるようになってきた。心筋が著しい虚血状況になると、動くことが使命の心筋細胞は動きを止め、生きることに専念してくる。かろうじて生き延びた心筋細胞は、バイパス手術により血流が回復すると本来の働きである収縮・弛緩を回復する。この現象は「冬眠現象」と名付けられた。心筋が動かなくなると、心臓は血液を送り出せなくなり、個体、人様は死んでしまうことになる。個体が死んでしまったら、細胞も死んでしまう。そんなことはお構いなしに、心筋細胞は「利己的」に生き残ろうとする。そんなことをよくやるものだと思う。

我々を構成する60兆個の細胞はそもそも利己的だということだろう。その細胞から出来た個体、ヒトが利己的であってもなんにも不思議ではなかろう。ただヒトは他の生物種と違って、高度に発達した「脳」を持ち、「理性」というものを持ち合わせている。欲望のままに生きないためのルールを作ってきた。しかし、食糧がなくなり、富の分配に著しい不公平が生じると争い、戦争が起こる。

「ウツ族」が政権を取ると、「フツ族」は追い出され、皆殺しに合う、その逆もまた起こる。そもそも利己的に出来ているヒトという生物種に、富を分配し、お互いを認めあい、「人」として平和に暮らすように求めることは無理なのだろうか。

平成25年2月8日

 国立病院機構指宿医療センター 総合内科
 中 村 一 彦