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指宿 菜の花 通信(No198) 田舎医者の流儀(173)・・・ウクライナ

 ウクライナの事を書こうと思うけど、筆が進まない。理不尽、あまりに圧倒的暴力、凄惨な現場・・・言葉を失う。この事態に世界中の人々はロシアの蛮行に強い「拒否感」を持ち、ウクライナの人々に深い「同情と共感」を抱く。ロシアの外相や国連大使などはこの明白な事実を前にしてもウクライナの作ったフェイクニュースだと主張する。大嘘だ。ロシア正教の最高責任者までもがウクライナ侵略を支持しているという。宗教者までも、ロシアは正義を持つことを止めたのか。

 ロシア軍が撤兵した後、後ろ手に縛られ、拷問を受けたと思われる死体もあるという。人間がすることとは思われない。この画像の進歩した世界は残酷な現実を映し出す。明々白々な事実・画像が映し出される。この現実をロシアのマスコミは否定する。これを支持するのは中国の国営放送のみだ。世界中の世論はロシアの蛮行に怒りの声を上げている。

 「戦争は不道徳で、不快で、野蛮で、無益で、愚かで、無駄ばかりで残酷なものになったのだ、と。そして、それと同じぐらい重要なのは、馬鹿げているということだろう」(暴力の人類史)。それを我々は長い歴史の中で、そして二度の大戦を経て学んできた。少なくともこの70数年、紛争に武力を用いることを避ける努力をし、話し合いを続けてきた。十分機能してはいないが二度の大戦を経て、次の大戦を防ぐために国連を大事にしてきた。

 その中でこの世界の問題解決のスキームをあざ笑うかのように、プーチンはウクライナに侵攻した。「ウクライナがネオナチの思想に侵され、ロシア系住民を圧迫している、今後、ロシアに脅威を与えてくる。今のうちに叩いておかないと」プーチンは言う。このような状況に内田樹氏は「ロシアは悪くない。NATOが東方に進出したのが悪い。正当防衛だ」と訴えるくらいで、ロシアが自国益を超えて、世界の人々が共有する「上位価値」のために戦っていると思っている人はどこにもいない。ウクライナが悪くて、ロシアが正しいと声高に主張する支援者が国際社会にまったくいない。これはかなり致命的なことだと思います。国際社会におけるプレゼンスというのは軍事力や経済力だけでは決まりません。思想的指南力とか道徳的な高潔が国際社会における地位にはおおきくかかわってきます。大義名分のない、自国益だけのための戦争を仕掛けたことでロシアの地位はいま劇的に低下した。もう歯止めがきかないと指摘する。(ネット配信記事より)

 プーチンの蛮行により、世界中のロシアへの否定的感情は極限に達し、ロシアはこの状況に今後50~100年否もっと長い間、向き合わざるを得ないことになる。

 

令和4年4月21日

国立病院機構指宿医療センター 総合内科
 中 村 一 彦