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指宿 菜の花 通信(No211) 田舎医者の流儀(186)・・・エリザベス女王が亡くなった

 9月9日英国のエリザベス女王が96歳で亡くなった。「大英帝国の衰退とともに社会が急速に変化し、国民の意識も多様化した。女王に寄せる期待と失望が交錯した70年間の在位期間は、あるべき王室の姿を模索し続ける歩みだった」「そんななかで女王が社会に寛容を求めたメッセージは、価値観を提示する王室の新たな機能を感じさせた」「他者に歩み寄ることで、得られるものがたくさんある」「多様性とは脅威ではなく、強みである」(朝日新聞)。「コロナ禍で死者が急増した際には、『私たちが強い意志を持って協力すれば、必ず克服できます』と演説し、国民を勇気づけた。 国内外で分断が深まる中、融和を説き、社会の安定に寄与した。世界各国で共感を呼び、英国の地位を高めたのはその姿勢である」(毎日新聞)。

 天皇陛下は「我が国との関係においても、女王陛下は両国の関係を常に温かく見守ってくださり、英王室と皇室の関係にも御心を寄せてくださいました。私の英国留学や英国訪問に際しても、様々な機会に温かく接していただき、幾多の御配慮をいただいたことに重ねて深く感謝したいと思います。 また、女王陛下から、私の即位後初めての外国訪問として、私と皇后を英国に御招待いただいたことについて、そのお気持ちに皇后とともに心から感謝しております」と談話を発表された。ぜひご夫妻での葬儀への参列を期待し、個人的な気持ちとしては「愛子様」もご一緒されたらいいなと思う。

 私どもより一世代上で、この時代を象徴するゴルバチョフさんと稲森和夫さんが相次いで亡くなった。ゴルバチョフさんは8月30日に91歳で死去した。ゴルバチョフさんは、「ペレストロイカ(建て直し)」や「グラスノスチ(情報公開)」といった国内改革の実施を通じて、1991年の冷戦終結に至る条件を作り上げた。1990年には「東西関係の抜本的な変化において指導的な役割を果たした」として、ノーベル平和賞を受賞した。しかし、どういうわけかゴルバチョフの改革はロシアで根付かず、逆方向のプーチンが国を支配し、現在のウクライナ侵攻という異常事態に至っている。ロシア国内でのゴルバチョフの評価は低いそうだ。私にはゴルバチョフの目指した方向は後世の歴史が評価するように思える。

 稲森さんは90歳で8月24日に亡くなった。稲盛和夫さんは 京セラ、KDDIの創業、JALの再生に辣腕を振るい“経営の神様”と言われた。鹿児島大学工学部の出身で鹿児島大学には稲森会館があり、その教えを受け継ごうとしている。稲森さんは厳しい資本主義のまっただ中にあって「利他の心」を説き、それを曲げることなく実践した稀有の存在であった。

 

令和4年9月14日

国立病院機構指宿医療センター 総合内科
 中 村 一 彦