ホーム » 指宿 菜の花 通信(No245) 田舎医者の流儀(220)・・・同時に二つは出来ない

指宿 菜の花 通信(No245) 田舎医者の流儀(220)・・・同時に二つは出来ない

 以前、風邪を引いたとき血糖が上がり疑問に思い、頼りにしているK先生に聞いた。先生は一言「それは肺炎が起こっていると思いますよ、胸部レントゲンを撮ってみてください」と。結果は「見事」に肺炎であった。糖尿病者は感染しやすいことは理解していたが、感染が起こると血糖が上がる事は理解していなかった。糖尿病者で血糖コントールが悪くなった場合、感染やがん等を考慮しなければならない事が判り、その後の私の診療におおいに役立った。

 最近、歯がぐらついて、痛くなり歯肉炎を起こした。歯医者さんで処置して頂いたが、血糖のコントロールが悪くなり、血糖が元のレベルに戻るのに10日間もかかった。「感染症が起こると,主に炎症性サイトカイン分泌亢進とストレスにより、インスリン拮抗ホルモン分泌増加、インスリン抵抗性の亢進が起こるという。さらにこれらの液性因子が直接的あるいは高血糖による糖毒性を介して膵β細胞におけるインスリン分泌の低下を招き、さらに血糖は上昇する」と言われている。炎症が起こると体は炎症をまず収める方向にエネルギーを向け、血糖が上がってしまう。つまり二つともは同時には出来ないようだ。

 隣の国はロケットを頻繁に打ち上げ、周りの国々に大きな脅威となっている。ロケットによる打ち上げ費用は、一回あたり、数十億円から100億円といわれる。限られた財源が軍備増強に向けられ、国民は飢えに苦しんでいる、なんとも腹立たしい現状だ。プーチンはウクライナに侵攻し膨大な軍事費を費消している。ロシアは大国だから、今のところ国民の飢えなどは報道されていないが、民政に向けられるべき費用が戦争に向けられると確実に国民生活は困難になっていく。戦争と国民生活の向上は矛盾する、国のあり様を蝕んでいく、戦争と民政は二律背反だ、二つの事は同時には出来ない事は明らかである。

 「樹木は現在進行中の気候変動を柔軟に乗り越えられるだけの効率のよい社会的共同体を形成している。それだけでなく、二酸化炭素を吸収し、その能力はどんな科学技術よりも優れている。したがって、森を活かすことは人類にとって最善の選択肢である。また、樹木には、周囲の気温を下げるだけでなく、雨量を適切な量に増やす働きもある。森全体に目を向けると、驚くべき事実が判明する。森は大規模な気流を形成し、その気流は雨雲を数千キロメートルも離れた他の大陸まで運び、本来なら砂漠であるような場所に雨を降らせている。」森の商業主義的利用を主にするならば、森の持つ本来の良さは失われ、地球という星の生命をも危機に陥れる事になる。

(樹木が地球を守っている ペーター・ウォールレーベン著 早川書房)

令和5年12月27日

国立病院機構指宿医療センター 総合内科
 中 村 一 彦