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指宿 菜の花 通信(No251) 田舎医者の流儀(226)・・・・紅麹問題

 米紅麹ポリぺプチドにはLDL(悪玉)コレステロールを下げて、LDL(悪玉)コレステロール値とHDL(善玉)コレステロール値の比率(L/H比)を下げる機能があるとして、消費者庁長官に届出され、国がお墨付きを与えた機能性表示食品である。

 小林製薬の「紅麹」を含むサプリメントを摂取した人に健康被害が相次いでいる、原因として青カビから生成される「プベルル酸」が疑われている。専門家は、「去年9月以降の製品に健康被害が偏っていることなどから、製造の過程でタンク内に外から別の菌が誤って混入、その菌が増殖し人体に影響を与えている可能性があるとの見方を示している。

 「トクホ」は、「安全性」や「効果」を国が責任をもって審査する。実際の製品を使った臨床試験が必要なため、申請して許可を得るまで数年かかると言う。一方、「機能性表示食品」は、事業者の責任で「安全性」や「機能性」の根拠に関する情報などを国に届け出るだけ。事業者による臨床試験は義務付けられておらず、国が審査して許可を出すわけでもないため、手続きは数ヶ月で済むと言われている。

 「トクホ」が「健康増進」に限定されているのに対し、「機能性表示食品」は「肌の弾力を維持する」「目の疲労感を軽減する」「足の動きをサポート」など、より幅広い「機能」を表示できる。この制度の導入にあたって、消費者庁の検討会で委員を務めた森田さんは、「トクホの場合、食品安全委員会が厳しい審査を行い、安全性が疑われるものは許可しないが、機能性表示食品の場合、その審査がないので、製品に関する不都合な情報が見落とされたり、企業側が不都合な情報を届け出なかったりする可能性がある」という。

 この制度の導入にあたって参考にしたのがアメリカにある同様の制度、アメリカの制度では、「事業者は、重篤な有害情報を入手してから15日以内に報告」することが義務付けられているが、日本の「機能性表示食品」のガイドラインには、「健康被害が出た場合には速やかに報告することが適当」と曖昧な表現にとどまっている。 今回の“紅麹問題”は、最初の健康被害が把握されてから情報が公表されるまでに2か月余りかかり、被害を拡大させた可能性がある。

 「機能性表示食品」は、事業者の責任で「安全性」や「機能性」の根拠に関する情報などを国に届け出るだけ。国が審査して許可を出すわけでもない「安全性」や「機能性」の根拠に関する情報などを国に届け出るだけ、国が審査して許可を出すわけでもない。今回の事件では紅麹そのものに問題があるわけではなく、製造過程で有害物質が混入したと言う事である。かつてジェネリック医薬品の水虫などの真菌症の治療薬に睡眠導入剤の成分が混入した事件があった。その際の点検で国が認めていない製法上の違反が多数見つかった。製法過程・現場の点検が重要であることを示している。残念ながら、メーカーは「儲け」を重視して、薬を作っているという自覚・矜持に欠けている事が多い。製造過程・現場に対する抜き打ち検査など監視の強化が求められる。

 アメリカのFDA(食品医薬品局)は、食品や医薬品、医療機器、ぺットフード、獣医関連製品が安全に消費、使用できることを保証している重要な機関である。FDAが誇る評判の一部は、規制のやり方に由来する。FDAは、単にチヱックリストで規制項目を確認したり、最終製品を精査したりするだけではない。製造プロセスのリスク(問題)分析に基づいて品質管理をおこなうという複雑な考え方〔ヴスタべース.アブロ—チ)を取り入れており、要するに製造プロセスを精査するのだ。FDAの基準のもとでは、製造プロセスに欠陥があれば、製品にも欠陥があると見なされる。このシステムを日本でも取り入れていくべきではなかろうか。

(参考文献:ジェネリック医薬品の不都合な真実 キャサリン・イーバン著)

令和6年4月17日

国立病院機構指宿医療センター 総合内科
 中 村 一 彦