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指宿 菜の花通信(No.3)「指宿病院も医師不足」

指宿病院は平成14年、22名の常勤医師がいましたが、平成17年に14名になり、現在15名しかいません。それに伴い、6病棟(282床)あった病室を3病棟(143床)に縮小しています。指宿病院は指宿市、頴娃町、旧喜入町の一部など約6万人を診療圏にし、国立病院機構の病院でありながら、実態は指宿市立病院的役割を果たし、地域医療の中核を担っています。需要が減ったのではなく、医師不足のため縮小せざるを得なかったのです。

限られた医師数で、指宿地区消防組合の救急出動1700件のうち、500件を受け入れ、その他の救急患者も3843件受け入れています。お産件数は平成20年170件、今年は200件を超えそうな形勢です(ちなみに、指宿市の出生数352人)。小児科もこの地区で唯一の病棟を持ち、入院の必要な子供を受け入れています。それを、産婦人科、小児科共、ただ一人の常勤医で対応しています。

地域の医療は、そこで生活する人たちの基盤となるものです。例えば、若いお母さんはその地域で安心してお産が出来、小児科があれば、居住してくれます。我々はそこのところを十分理解しているつもりです。ただ、現在の指宿病院は医師の自己犠牲の上にギリギリのところで地域医療を支えており、現在の医師数では限界を超えていると言わざるを得ません。何とか医師が増えて欲しいというのが切実な願望です。

医師数が減ったのは平成16年に始まった新臨床研修制度が引き金になったことは否めません。平成21年度の鹿児島県の初期臨床研修医は54名、鹿児島大学の入局者(卒後3年目、後期研修医)は40名でした。平成16年以前は少なくとも100名を超えていました。約半分になっています。鹿児島県の医師のうち亡くなる方、廃業する方が45~50名です。

すると、やっと現状維持ということになり、地方の医師不足を解消するどころか、今後、ますます厳しくなると云わざるをえません。

鹿児島に若い医師を残す施策、医師の地域、診療科偏在、女医の働き易い環境の育成など課題は多く、真剣な議論と行動が望まれます。

平成21年12月01日

 国立病院機構指宿医療センター 総合内科
 中 村 一 彦